Q 当社は、工務店を営んでいます。建物修繕や外装塗装の現地調査でドローンを活用したいと考えています。機材を準備すれば、すぐにでも始められるのでしょうか。
A ドローンを飛行させるには、知識と技術のほか、飛行経歴も必要です。そして、機体はあらかじめ国土交通省に登録し、事前申請にて飛行させる計画の許可や承認を取得しなければなりません。事業化に際しては、飛行に係るリスクへの理解や備えが必要です。特に、飛行させる現場においては、航空法に定められた飛行時の順守事項・飛行方法に従うことはもちろん、事故やトラブルを避けるための安全対策や近隣住民の理解を得ておくことが重要になります。
昨今、建築現場の点検や調査などドローンを活用する場面が増えています。足場を組んで屋根に上ることなく空中から屋根の状態を確認できることや、職人の安全性向上、業務効率化にも役立つことが主な理由です。このようにビジネス展開が期待されるドローンですが、購入すればすぐに利用できるわけではありません。ドローン飛行は、航空法による規制対象となりますので、事前の届け出、飛行許可の取得が必要です。
無人航空機の機体登録
2022年6月20日から機体の登録が義務化されました。飛行させるドローンはあらかじめ申請して登録を受け、飛行させる機体には登録記号を表示しなければなりません(航空法132条の5)。登録を受けずに、または登録記号を表示せずに飛行させると、罰則対象となります(航空法157条の9)。
飛行の許可・承認、予定登録
登録すればどこでも飛行させることができるわけではありません。飛行できない空域があり、制限されています。航空法の規制には「飛行許可」「飛行承認」の区分があり、こうした場所で飛行させるには許可・承認の手続きが必要です(航空法132条の85)。 建物の調査などの場合で、許可・承認が必要になる飛行には以下が該当します。
・人口集中地区の飛行(許可)
・30m未満の飛行(承認)
・目視外飛行(承認)
航空法による規制以外にも、各都道府県や自治体による規制があるため、注意が必要です。
ドローンの飛行許可・承認申請のためには、10開庁日前までの書類提出が必要です。ドローン情報基盤システムを利用し、オンラインで行います。申請から許可取得までは2週間程度です。申請は、飛行の都度、個別に申請する「個別申請」が基本ですが、業務で飛行させる場合は、一定期間内に繰り返し飛行させたり複数の場所で飛行させたりすることから、都度申請ではなく「包括申請」が行えます。
ドローンを飛行させるのに必要な知識と技術の習得には、国土交通省の要件を満たした管理団体に属するドローンスクールを利用するとよいでしょう。操縦者に求められる飛行経歴(10時間以上)、知識、能力の要件を身に付け、審査に通れば、許可が得られます。
許可・承認を受けたら、飛行前に飛行の予定情報を「飛行情報システム(FISS)」に登録します。同一地域、同一時間帯で他のドローンの飛行予定があると安全確保の点で問題が生じる場合があるので、競合する飛行予定がないかどうかも事前に確認します。所定の手続きを行い、飛行許可を得て、飛行予定登録を終えたら、現場で飛行させることができます。
飛行に際しての留意点
現場で飛行させる際には、「アルコール又は薬物等の影響下で飛行させない」など順守すべき事項、「日中(日出から日没まで)に飛行させること」など飛行方法の定めがありますので、これに従います。違反すれば厳しい処罰の対象ともなります。また、事故やトラブルはドローンにおいてもつきものです。ドローン飛行に係るリスクを踏まえ、安全対策や保険加入、近隣住民への説明など、事前の備えも忘れないようにしましょう。
(中小企業診断士・竹内 敏則)
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