「住み慣れた地域で生きる」ことをデイサービスでお手伝い
特定非営利活動法人にこっと秋田 代表理事 八代 美千子(やしろ・みちこ)
障がいのある子どもたちと共に過ごして
私は今年で看護師になって28年目になります。そのうち約20年を重い障がいのある子どもたちと一緒に過ごしてきました。
医学の進歩により、今まで助からなかった命が救われるようになり、障がいと共に生きていく子どもたちも増えています。生まれてから何度もつらい治療をしたり、命の危険にさらされたりと、大変な思いを本人もその家族もしています。そんな苦難を乗り越え「今」を一生懸命生きる子どもたちが愛おしくてたまりません。
今ではみんなのことを敬意を込めて「めんこさん」と呼んでいます。 めんこさんたちは、自分で体を動かすことができなかったり、言葉での表現が難しかったりするので、まばたきやわずかな指の動きなど、全身を使って気持ちを伝えてくれます。また、呼吸が十分にできず人工呼吸器を付けたり、のみ込む力が弱くチューブから栄養を取ったりするなど、医療的ケアが必要な子どもたちも多いです。そしてその家族は、自宅で24時間365日介護をし、精神的にも身体的にも休まる時間がないのが実情です。
私が病院で働いていた時のことです。めんこさんの介護の中心だったお母さんの体調が優れず、受診を勧めると「私が入院している間、この子を安心して預けられる場所がない。私が死ぬ時は、この子も一緒だから」と言われたのです。ショックで、すごく考えさせられました。
安心してめんこさんたちを預けられる場所をつくろう
その頃、秋田市内には、めんこさんたちを対象としたデイサービスは少なく、受け入れ態勢が十分とは言えませんでした。「安心して預けられる場所がないのであれば、自分でつくろう」。そう思い立ち、勤めていた職場を辞め、2018年4月「にこっと秋田」を設立。そして10月、多機能型重症児者デイサービス「にのに」を立ち上げました。当時、施設の番地が2-2だったので「にのに」と名付けました。にのにでは、1日当たり平均6~8人を受け入れ、生活の援助や活動をしています。
めんこさんたちが住み慣れた地域で生きていくためには、地域の皆さんの協力が必要です。今はSNSで活動を紹介したり、外出をしたりして皆さんと関わりを持つようにしています。「声をかけていいのか分からない」「失礼なことを言っていないか心配になる」など、めんこさんたちに話しかけることをためらう人は多いと思います。それは正直な反応で恥ずかしいことではありません。関われば関わるほどお互いを知ることができ、めんこさんたちの存在が当たり前になってくると考えています。
今は人生100年時代と言われています。医学の進歩で、病気にかかっても治療ができ、その代わり体のどこかに不自由さを抱えながら生きていく時間は、私たちも長くなるのかもしれません。みんなが「住み慣れた地域で生ききる」ために、お互いを思いやり認め合う優しい社会になるよう、これからも頑張っていきたいと思います。
会社データ
社名 : 特定非営利活動法人 にこっと秋田
所在地 : 秋田県秋田市牛島西2丁目3-18
電話 : 018-838-6125
創業 : 2018年
事業概要 : その他の児童福祉事業(医療ケアの必要な重症心身障がい児者の日中支援活動)
HP : https://nicotto-akita.sakuraweb.com/
【秋田商工会議所】
※月刊石垣2023年5月号に掲載された記事です。
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