ライフサイクルとは
地域一番店とは何かが分かったところで、地域一番店〝商法〟の話に移ろう。今回伝えたいのは「ライフサイクルごとに手を打つ」という考え方だ。
ここで言うライフサイクルはお客さんのライフステージの変化のことではなく、商品のライフサイクルだ。図の通り、商品には永遠に続くライフサイクルがある。初めから順に導入期→成長期→成熟期→衰退期だ。
商品が成長期にある時は誰でも売れる。東京ではやっているものを地方に持ってくるいわゆる〝タイムマシン経営〟はその典型だ。
問題は成熟期に入った時に大手が値下げでシェア拡大を仕掛けてきて、結局は資本力の勝負にされてしまうことだ。
負けが目に見えているその時期の商品に手を出すよりも、今扱っている商品のライフサイクルを見てみよう。すると、ほとんどの商品が衰退期にあることが分かるだろう。
この点はもうハッキリさせたほうがいい。皆さんのお店にあるのは大半が衰退商品だ。まずはそのことを自覚すること。
2度目の成長期
ただ、商品のライフサイクルには波がある。人の一生は衰退して死んだらそれきりだが、商品の場合、切り口を変えたりマーケットを変えたり、あるいは新しい顧客に売るなどして、「2度目の成長期」を売り手側が演出し、つくり出すことができる。
地方を回ると分かるが、今は若手経営者の方がかえってこれを上手にやっている。性懲りもなくタイムマシン経営に飛びついている経営者は50代60代に多い。この世代は過去の成功体験を引きずるからどうしても安易な手法が抜けないんだ。
彼らと違い、若い世代は生まれた時にはもう国内は衰退期だった。衰退商品しか知らない彼らは最初から、良い意味で変な期待をせず商品をフラットに見る。すると案外2度目の成長期を演出するヒントが見えてくる。
工夫で好機創出
ここで皆さんは疑問に思うかもしれない。「2度目の成長期も資本力の勝負になる点は同じでは?なぜ1度目は駄目で2度目はOKなのか」と。
もう一度、図を見てみよう。すると2度目の成長の波は1度目の半分弱で、それほど大きくないことが分かるはずだ。
そうすると、どうなるか。大手は小さな市場は非効率なので入り難い。
また、大手以外に関しても、冷静に周囲を見渡せば、そもそも競合が激減していないだろうか。かつては100社あった競合が今では10社前後。そんな状況にすらなっているはずだ。
競合は減ったが商品の本質的な価値は廃れていない。ということは、むしろこれからは、自分たちの工夫次第で2度目の山 を創出し、独占できるチャンスでもある!
地域一番店商法とは、眠っていた商品をブレイクスルーさせ現状を打破するという、商業者本来の手法なのだ。
次回は、その具体的な実践を紹介していこう。
(サトーカメラ株式会社代表取締役副社長・商業経営コンサルタント・佐藤勝人)
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