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テーマ別企業事例 “販路拡大”の頼れる味方 SNSはわが社のセールスマンになる!?

“インスタ映え”という言葉が一般的に使われるようにSNS(ツイッターやインスタグラムなどに代表されるソーシャルネットワークシステム)は、今や新たな宣伝媒体として大きな力を持っている。そんなSNSの強い影響力にいち早く注目・活用して、大きな業績を上げている企業を紹介する。

事例1 新卒採用を目的としたTwitterがバズって知名度、売り上げアップに貢献

セルタン(神奈川県厚木市)

神奈川県厚木市にある本社。現在、中国でのネット販売を念頭に置き、年間1500万円を投資して社員らのネット販売法の理解度を高めている

設立52年を迎える老舗ソファメーカーのセルタンが、2017年6月にTwitter(ツイッター)アカウントを開設した。当初約100人だったフォロワーは約1年後には7万人以上に膨れ上がり、商品の売り上げアップだけではなく、新商品開発という予期せぬ発展にまでつながった。同社が社内外で多用しているSNS、その活用術に迫る。

求人の分母拡大を狙ったTwitterの思わぬ展開

開発から製造、販売まで手掛けるセルタンは、毎月6アイテム以上の新商品を生み出す商品開発力と技術力を持つ、国内のソファ生産の16〜17%を占める日本最大のメーカーだ。産業廃棄物となるウレタンの廃材を利用したリサイクルソファブラントとして世界市場に打って出るなど、活躍目覚ましいが、BtoBゆえに一般ユーザーへの知名度は低い。

「求人の中から優秀な人材を採用しても、現場が求めたレベルに達していない。その状況を打破するには求人の分母を広げるしかありません。その対策の一つとしてTwitterを使ってみました」

そう語るのは代表取締役社長の八木美樹男さんだ。7〜8年前にオンラインショップでの商品販売を始め、今ではSNS関係が全体の売り上げの3分の1を占めるまでになっている。それも近年はパソコンではなく、スマートフォンなどの携帯電話からの注文が半数を占めるという。

家具を携帯で買う時代。その意外性に驚くと同時に、SNSの可能性を感じて、十代の若者の使用頻度が高いTwitterのアカウントを取り、2017年6月に「セルタン採用チーム」を開設した。だが、開設と人材募集のタイミングにズレがあり、肝心の大学生からの反応はいまひとつ。そこで会社のことを知ってもらおうと、自社商品を発信し続けた。すると意外にも小学生や中学生からの反応があり、100人ほどのフォロワーがついた。だが予期せぬ展開はここから一気に加速していく。Twitterで発信した内容が一躍話題になったのだ。俗にいう「バズった」のである。

「こんなものが欲しい」の声に応えた商品開発がヒット

「フォロワーが増えた最初のきっかけは、ニコニコ動画の人気アーティスト『そらる』さんとのコラボ企画による『はんぺん座椅子』のヒットでした」と八木さんは振り返る。この椅子の製造過程をTwitterで随時発信すると、そらるさんのフォロワーらがリツイート(引用して自らのTwitterで発信)し、発売前から話題になると同時に、同社のフォロワーも5倍に増える。

また、巣から落ちるヒナの落下防止にセルタンの食パン座椅子を使った人のツイート(書き込み)を、同社のTwitter担当者が偶然見つけ、個別にお礼メールを送ったことから交流が始まる。その一連のやりとりがツイートされると、フォロワーは倍の1000人に達した。

「鳥好きの間で話題になって、その後、鳥柄ソファが開発されるまでになりました」と笑う。また、商品の運送料削減を念頭にデザインしたビーズクッションが、ポケットモンスター(通称ポケモン)のカビゴンというキャラクターに酷似していると評判になり、株式会社ポケモンの許可を得て「カビゴンビーズソファ」が誕生した。

だが、〝予想外〟だけではなく、自らも仕掛けた。フォロワー1000人達成記念に、感謝を込めて毎月10人に1人の割合で「目玉焼きブランケット」Sサイズが当たるイベントを企画したのだ。この企画は1万6000リツイートされ、フォロワーは一気に跳ね上がった。

「外れた人には原価で買えるようにしました。もちろん赤字です」

だが、その後も企画は続け、フォロワーからの声に応えた商品開発にも注目が集まり、フォロワーは7万人を超えるまでになる。

国別にSNSを使い分け急速に進むネット環境に順応

「会社のホームページに比べて、SNSは一般ユーザーがもっとカジュアルに接触してきてくれるのが魅力です。しかし、そうは言っても特定の人だけに返信しない、少人数でも気分を害するようなことは書かないなど、企業サイドとしては細心の注意が必要です。7万人というフォロワーの多さはうれしい半面、炎上するリスクと比例します。そもそも人材採用が目的だったので、一旦(いったん)方向転換しようと18年10月にアカウントは残しつつも、新たに公式アカウントを立ち上げて企業情報を発信するようにしました」と八木さん。

それに当初の狙いである人材採用でも成果はあった。Twitterから6人の応募があり、面接時には「プレゼントが2回も当選して縁を感じたから」と志望動機を語る応募者もいたという。

「求人情報サイトを活用した募集は500人程度なので数としては微々たるものですが、求人情報サイトのアンケートに答えた200人のうち1割以上がわが社のTwitterを知っていたという結果が出ました。ものづくりの楽しさを共有するという、家具をモノとしてだけではなく、他では味わえないコトをリアルタイムで発信できるのがSNSの醍醐味(だいごみ)ですね」

また、同社は社内のコミュニケーションツールとしてもSNSを活用している。海外事業を中国、タイ、台湾の3カ国で展開しており、海外スタッフとの連絡は主にスカイプだ。タイでは普及率の高いFacebookを使って企業情報を広く発信している。

「どの国のスタッフもレスポンスが早く、国境や時差を感じることなくやりとりできます」

メールほどかしこまらずに連絡できると社内でも好評だ。社員だけが閲覧できるサイトでは、賞与で海外に行ったプロジェクトチームの楽しいレポートを公開して社員の士気を高めるなど、SNSの気軽さを生かし、社内外に新しい風を送り込んでいる。 ※【バズる】SNSを通じて一挙に話題が広まること

会社データ

社名:株式会社セルタン

所在地:神奈川県厚木市金田 1655

電話:046-222-2611

代表者:八木美樹男 代表取締役社長

従業員:39人(他に準正社員1人、アルバイト117人)

HP:https://ct1.jp/

※月刊石垣2019年11月号に掲載された記事です。

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