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テーマ別企業事例 “販路拡大”の頼れる味方 SNSはわが社のセールスマンになる!?

事例2 SNSで“メーカー&顧客&消費者”をつなげて販路拡大

大阪製罐(大阪府東大阪市)

東京・恵比寿にある同社ショールームでは、オリジナル缶を使っている洋菓子店の商品を常に展示販売しており、その情報はSNSで随時発信

洋菓子用パッケージ缶を中心に製造している金属加工会社、大阪製罐(かん)。2014年にオリジナルデザイン缶の販売サイト「お菓子のミカタ」を開設以降、ブログやSNSを活用して頻繁に情報を発信。顧客層の洋菓子店のみならず、菓子缶好きの消費者の心をつかんで「BtoBtoC」の役割を確立し、新たな販路を獲得した。

小規模個店向けに小ロットのデザイン缶つくる

特に菓子やスイーツといった商品は、パッケージデザインが売れ行きを左右するといっても過言ではない。近年では、パッケージそのものが商品PRの役割を果たす傾向が高まっている。

そんな重要なポジションを担う“菓子缶”を長年つくり続けてきたのが、大阪製罐だ。凮月堂、モロゾフ、ゴンチャロフなど大手洋菓子メーカーのOEMをメインに請け負ってきた同社だが、2010年ごろから洋菓子店向けオリジナルデザイン缶の製造販売にも力を入れている。14年には専用販売サイト「お菓子のミカタ」を立ち上げ、ブログやSNSを駆使して菓子缶の魅力を発信。現在では、約700の洋菓子店を顧客に持つほか、菓子缶を愛好するファンからも熱い支持を受けている。

同社がオリジナル缶づくりに乗り出したのは、08年のリーマン・ショックがきっかけだ。売り上げが激減して販路の新規開拓に乗り出すも、大手洋菓子メーカーにはすでに決まった取引先がある。そこで目を向けたのが小規模個店だった。

「私が入社4~5年目のころで、商店街にあるようなまちの洋菓子店に飛び込み営業をかけたんです。すると1軒、話を真剣に聞いてくれた店があり、『うちの店がもっと大きくなったら使いたいけれど……』と言われたことがずっと頭に残っていました」と同社社長の清水雄一郎さんは振り返る。

通常、菓子缶の製造ロットは3000個以上のため、少量の受注は割高になる。それが小規模個店が菓子缶を使いたくても使えない理由だ。しかし、同社がHP上に開設した「オリジナルデザイン缶、つくります」のページには、「100個欲しい」という要望が度々寄せられていた。

「店ごとに100個つくるのは不経済ですが、欲しい店がたくさんあるようなら、こちらが既製のデザイン缶をつくって売ればいいのではと。そこで外部のデザイナーに依頼し、汎用(はんよう)性のある3種類の菓子缶を5000個ずつ試作しました」

従来の営業+情報発信で製品の周知を図る

その後、試作品を携えて洋菓子店を回ったり、DMを送ったりしていたが、既製の菓子缶の周知に効果を発揮したのがブログだ。

「当社には『菓子缶ヒーロー・カンカンマン』というキャラクターがいて、当時『カンカンマンブログ』を開設していました。缶のことや会社の出来事などを毎日1本ずつ投稿していたんですが、更新が多いほど人の目に触れる機会が増えるので、問い合わせも増えて仕事につながるようになりました」

手応えを感じた同社は、洋菓子店専門の販売サイト「お菓子のミカタ」を開設する。同時期に同サイトのSNSと清水さん個人のSNSもスタートした。ダブルでアカウントをつくったのは、より多くの友だちやフォロワーとつながり、自分のことを知ってもらうためだ。投稿内容はどちらも缶にまつわることがメインだが、清水さんのアカウントの方が圧倒的に友だちやフォロワーが多いという。それは投稿が単なる情報発信にとどまらず、「私」を主語にして「缶についてもっと知ってほしい」という気持ちで書いているため、共感を得たのだろう。

「私のSNSでは、菓子缶を使ってもらっている洋菓子店さんのことをよく取り上げています。それを見たフォロワーの方が缶を気に入って『いいね』してくれたり、実際に洋菓子店に買いに行って、商品を自分のSNSにアップしてくれたりします。缶に入ったお菓子は“映(ば)える”ので、見た人が興味を持ち、投稿や画像をリツイートして、勝手に宣伝してくれる。SNSの力を改めて実感しています」

消費者に好まれる新製品をつくって提供

SNSで話題になったこともきっかけとなり、缶をテーマにしたテレビ番組にも何度か取り上げられた。それを機にさらに友だちやフォロワーが増え、情報発信力が高まっていった。

「われわれの仕事は主にBtoBですが、消費者がどんな菓子缶を好むのか分からないと的外れなものをつくってしまいます。その点SNSのおかげで消費者の好みを知ることができ、BtoBtoCがスムーズになりました」

同社では4年ほど前から、年に1回洋菓子店向けの工場見学ツアーを実施し、見学後に自身の経験に基づくSNSの活用法に関する講座も開いている。毎回定員いっぱいの参加があり、盛況だという。講座では、効果的な写真の撮り方などをレクチャーしているが、一番大切なのは「相手に何を伝えたいのか」を踏まえながら自分の言葉で投稿し、自分を好きになってもらうことだと清水さんはアドバイスする。

「現在、小規模個店向けの売り上げは7000万円強で、当社全体の売り上げからみると大きくはありません。しかし、当社の菓子缶がまちの洋菓子店でも活用され、集客の役に立っているのは大きな励みです。今後もSNSを通じてもっと多くの人とつながり、ニーズを掘り起こしていきたい」とさらなる期待を寄せた。 ※【映える】(ばえる)ひときわ美しく、見栄えがすることを表す言葉

会社データ

社名:大阪製罐株式会社(おおさかせいかん)

所在地:大阪府東大阪市岩田町2-3-28

電話:06-6723-5545

代表者:清水雄一郎 代表取締役

従業員:95人

HP:http://www.osaka-seikan.co.jp/

※月刊石垣2019年11月号に掲載された記事です。

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