地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化「100年フード」の中から、日本が誇る食文化を文化庁、有識者がリレー形式で紹介します。
令和4年度「100年フード」有識者特別賞に選ばれた「山形芋煮」。「山形といえば芋煮」と言われるほど、その食文化としての知名度・浸透度は高く、賞にふさわしい食遺産です。
芋煮の歴史は古く、その起源は1600年代半ばとも言われていて、100年フードならぬ"400年フード"でもある日本の伝統食の一つ。その発祥には諸説あります。例えば、旧暦の八月十五夜の「芋名月」の日に里芋を供える風習から生まれたのではないかとする説。そのほかにも、江戸時代には最上川を利用した舟運が盛んで、船頭たちが船着場の近くの地域で収穫した里芋と船で運ばれた棒鱈を鍋で煮て食べるようになったとする説などがあります。いずれも日本の古くからの慣習や地域性の中で生まれた、実に日本らしい煮物文化です。
「山形芋煮」といえば、毎年9月に開催される「日本一の芋煮会フェスティバル」を思い浮かべる人も多いと思います。山形市の河川敷で、直径6・5mの大鍋の中で大量の具材を煮ながら、なんとショベルカーを使って豪快に混ぜていく、全国的にも有名なまちおこしイベントです。私自身も以前イベントに参加したことがあり、一度に約3万食もの芋煮をつくる、その鍋の巨大さに度肝を抜かれた記憶があります。地域に根付く古くからの食文化を世間にインパクトある形でPRしていく取り組みは、学びの多い「地域創生」の一つです。今年も9月に開催予定の芋煮会フェスティバル、ぜひ山形で本場の味を堪能してみてください。
100年フード
文化庁は、①地域の風土や歴史の中で創意工夫し地域に根差したストーリーを持つ②世代を超えて受け継がれてきた③地域の誇りとして100年を超えて継承することを宣言する団体が存在する、食文化を「100年フード」として認定しています。
100年フード公式ウェブサイト ▶ https://foodculture2021.go.jp/jirei/
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