第二次安倍内閣の発足から、まもなく6年。私は繰り返し、「経済最優先で取り組んでいく」、このように申し上げてきました。
その結果、日本企業の経常利益は過去最高水準となり、正社員の有効求人倍率も1・13倍──、これは、統計開始以来最高の数値です。さらに、高卒・大卒の内定率も過去最高水準となりました。この5年半で名目GDPは60兆円増え、過去最高となる553兆円に到達しました。
デフレという、暗く長いトンネルにいましたが、アベノミクスを果敢に進め、「もはやデフレではない」、そう言える状況をつくり上げ、「失われた20年」、これは、もはや、過去のものとなりました。 「TPPへの交渉参加は、まさに国家百年の計」──。2015年にTPPへの交渉参加を表明した際に、そのように申し上げました。
あれからおよそ3年。遅れて交渉に参加したわが国が、このわずか3年のうちに、交渉をリードし、まとめあげ、そして、ついに、先の通常国会では、TPP11協定が承認されました。人口5億人、GDP1000兆円を超える巨大な経済圏の誕生です。さらに、それだけではありません。日本と欧州のEPAも署名に至り、人口約6億人、世界のGDPの約3割、22兆ドルを占める、世界で最大級の規模の経済圏が誕生することになります。
経済連携の推進・自由貿易の進展は、何も、大企業のためだけのものではありません。地方の中堅・中小企業の皆さまにとっても、関税や、国ごとに異なる複雑なルールは、もはやハードルではなくなります。わが国にいながら「世界とつながる」。そして、「良いモノが良い」と評価される広大なマーケットに、日本の企業の皆さまが飛び出していく。そのような時代の到来です。
世界的に保護主義への懸念が広がる中、わが国は「自由貿易の旗手」として、自由で公正な、ルールに基づく新たな時代の経済秩序を世界に打ち立ててまいります。
日本商工会議所の皆さまにおかれましては、これからもわが国経済の屋台骨である中小企業・小規模事業者のリーダーとして、大いにご活躍いただきたい、そのように思います。
今、皆さまの大きな悩みの一つは「人手不足」ではないでしょうか。日本経済の人手不足感が高まる中で、質・量の両面で人材を確保するとともに、生産性の向上により、その潜在成長率を高めていくことが急務です。中小企業・小規模事業者の現場における、生産性の向上を政府としても後押ししていきます。
また、即戦力となる外国人材の受け入れに関する検討についても、避けて通ることのできない問題です。新たな在留資格や、政府の体制も含め、年末までに総合的な対策をとりまとめたいと思います。
そして、人口減少・少子高齢化社会における事業承継の問題は、まさに、「待ったなしの課題」です。わが国の競争力の源泉は、その高い技術力に裏打ちされた「ものづくり」の強さでしたが、その技術やノウハウ──いわば、わが国産業の「宝」が承継されず、失われつつある。このような危機感の下、ここにいる世耕大臣の尽力を得て、平成30年度税制改正において、事業承継税制の抜本的な拡充を行いました。
次の世代にバトンをつなぎ、高い技術をしっかりと継承していく。そのため、引き続きしっかりと政府としての後押しをさせていただきます。
今年は、明治元年から起算して、満150年の年に当たります。近代国民国家への第一歩を踏み出した日本は、明治期において多岐にわたる近代化への取り組みを行い、国の基本的な形を築き上げていきました。
その「明治」が始まってから、150年。先の通常国会では、働き方改革関連法、TPP関連法など、重要法案が成立し、わが国が次の時代に向かって大きく前進しました。
しかし、今後もさらなる改革の推進が必要です。
「生涯現役、生涯活躍」。──いくつになっても意欲さえあれば働ける、そんな社会を今後つくり上げていく必要があると考えております。
生涯現役社会を前提として医療・年金など社会保障制度全般にわたる改革を進め、全ての世代の方々が安心できる社会を実現していきたいと思います。
次の50年、100年、そして、次の150年に向け、子供たちが、「この国に生まれてよかった」。そう思い、誇りを持てる日本を創り上げてまいります。
来年は、皇位の継承、日本で初めてのG20サミット、さらにその先には2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が控えています。
まさに、大きな歴史の転換点にあるわけですが、『平成』のその先の時代に向けた、新たな国造りを進めていきます。
今年は、明治150年の年であると申し上げましたが、わが国最初の商工会議所が設立されてから、140周年の節目の年でもあります。商工会議所の発展が経済界を支え、それが、わが国の成長や国富の増大を支えてきた。私は、そのように思っております。
これまでの、皆さまの多大なるご理解とご支援に、改めて感謝申し上げるとともに、共に挑戦し続ける「同志」として、皆さまとは切磋琢磨(せっさたくま)してまいりたい、そのように考えております。 (9月20日)
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