日本商工会議所は7月19日、都内で重要政策課題などを話し合う夏季政策懇談会をハイブリッド形式で開催した。会合には、小林健会頭をはじめ、副会頭、特別顧問、常議員・議員、各委員会委員長、専門委員長など77人が出席したほか、全国の商工会議所からオブザーバーとして199人が参加。「中小企業が対応すべき重点課題」「地域が取り組むべき方策」の二つの視点で活発な討議を行った。
今年の懇談会の全体テーマは「日本再生・変革に挑む」。会合は、2部構成となっており、第1部では「深刻化する人手不足や賃上げ、取引価格適正化、事業承継、観光、地域経済の好循環の実現による地方都市の再生、成長産業への投資・新事業の創出などについて議論した。
第2部は分科会方式で三つの分科会に分かれ、第1部での議論を踏まえた商工会議所が取り組むべき方策について意見交換。各地で取り組まれている「中小企業の自己変革支援」や「地方創生の再起動」などの事例を共有するとともに、商工会議所に求められる役割や活動などについて、議論を行った。
第1部では中小企業の賃上げに向けた環境整備について、「賃金を上げたら、106万円、130万円の『年収の壁』によって就業時間を減らす動きがさらに強まる。国の支援では焼け石に水である」「パートナーシップ構築宣言について、商工会議所と自治体などとの間で連携協定が結ばれる動きが見られ、価格転嫁の調整に意義があった。各地域で、啓発やインセンティブの付与なども展開されており、これを全国的に広げていくことが重要だ」「労務費の価格転嫁が進んでいない。大企業の調達部門まで実効性を高めることや、社会全体で価格転嫁を当たり前のものとする認識の共有が必要」といった意見が出 された。
人手不足への対応については、多様な人材の活躍という視点から、「経営の中心にいる男性役員がまず女性を引き上げていくよう決断してもらい、女性が管理職・役員を望む環境をつくっていくべきだ」「女性が勤めたくなるような職場をつくっていかなければならない」「男性育休の取得率向上に向けて、中小企業がメリットを感じるようなインセンティブの設定などを考えていくべきではないか」といった指摘があった。
事業承継については、「承継のタイミングが合わないなど、使える人が限られている。制度の恒久化により、長いスパンで承継計画が描けるようにすべき」といった声が寄せられた。
地方都市の再生については、「地域産業の海外展開が非常に重要。再来年行われる大阪万博は50年に1度の機会だ」といった意見があった。
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