先日、前職であるリクルート社の国内旅行を専門とする『じゃらん』の研究機関に勤務している後輩とある会合で再会したとき、興味深いコメントをもらいました。その後輩いわく、地方創生のキーとして「日本版DMO」の活躍に注目とのことです。
ちなみに日本版DMOとは地域の稼ぐ力を引き出し、地域への誇りと愛着を醸成する観光地経営の視点に立った観光地域づくりのかじ取り役として登録された法人です。地域においての観光を事業として大きく成長させるためには、専門性が高い組織が各地で必要との観点から、海外の取り組みを参考に政府の後押しもあり、スタートしました。ちなみにDMOのDであるデスティネーションの意味は旅行目的地です。長年、観光地を周知させるキャンペーンで頻繁に登場してきたので親しみのある言葉かもしれません。
さて、そんな観光の中核法人としてDMOは全国で90社近くになり、皆さんの地元にも設立されているはずです。2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控え、訪日外国人客4000万人を目標とする今こそ、地域の観光事業は、パラダイムチェンジが必要なのは間違いありません。
でも、DMOは各地で何を担っていくことになるのでしょうか?取り組みが進んでいる法人の1社に「せとうちDMO」があります。七つの県にまたがる広域連携の法人として、瀬戸内ブランド商品の国内外における販売支援を行っています。すでに老舗の菓子メーカーの東京進出、事業拡大に伴う資金支援、あるいはアジアでの販路拡大のため瀬戸内ブースを海外の見本市で展開するなど、地元企業の稼ぐ力を引き出しつつあります。こうした成果は瀬戸内のような広域連携に限らず、日光や静岡など地域を絞ったDMOでも生まれつつあります。
ただ、目指すゴールは稼ぐことだけではありません。地域への来訪者を増やし、地域の雇用拡大を促進し、人口増大につなげることも同じくらい重要なミッションといえます。つまり、地元の宿泊施設や法人と連携していく必要があるのです。
そこで、DMOが成功するためには地元を巧みに巻き込み、観光を通じて稼げるリーダーの存在が必要となります。おそらく経営者的な感覚も必要とされるのは間違いありません。すでに取り組みが進むDMOでは、そうした条件をそろえたリーダーの存在がメディアなどでも頻繁に紹介されています。ですから、経営者レベルの人材の雇用機会の創造を担う存在ともいえます。もしかしたら、地域に対して人材を動かす貴重な存在としても期待できるのかもしれませんね。
(株式会社セレブレイン代表取締役社長・高城幸司)
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