わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、価格交渉力の強化に向けて、どのような取引行為が親事業者の法令違反に該当するおそれがあるのかなどについて解説します。今回は「事後的な仕様変更・工程追加に要する費用の受注者負担」についてご紹介します。
発注変更に要した費用を要請された場合の対応は?
発注者が自己の都合で発注内容を変更したにもかかわらず、当該発注内容の変更のために受注者が要した費用を全額負担しないなど受注者の利益を不当に害することは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)や独占禁止法に違反するおそれがあります。
【チェックポイント】
□当初の発注から設計や仕様が変更され、追加の作業や当初の納期に間に合わせるための人件費増加などが生じたにもかかわらず、追加費用を受注者が負担していませんか。
□当初の発注内容で加工が進んでいるにもかかわらず、作り直しに相当するような仕様変更が指示され、当初の発注内容で製造された仕掛品の受領を拒否されていませんか。
【相談事例】
Q.下請事業者A社は、親事業者B社から部品の製造を委託されています。B社の都合で当初の発注から設計・仕様の変更があり、A社に当該変更への対応や、納期に間に合わせるための人件費増などの追加費用が生じました。また、B社はA社に対して、顧客からの要請を理由に追加的な作業も行わせました。このため、人件費などの費用が増加したにもかかわらず、B社はいずれの追加費用も負担していません。B社の行為は下請法上問題となるでしょうか。
A.下請事業者に責任がないのに、親事業者が下請事業者に対して費用を負担せずに発注の取り消しや発注内容の変更を行ったり、受領後にやり直しをさせたりして下請事業者の利益を不当に害すると、不当な給付内容の変更およびやり直しの禁止の違反となります。委託内容とは異なる作業を行わせる場合は、双方で十分な協議の上、下請事業者に対して追加費用を負担することが肝要です。なお、協議に際しては、「日時」「担当者(自社・取引先双方)」「方法(対面・電話など)」「交渉経緯」などを書面(議事録など)に残すように心掛けましょう。
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