私が船井総研に入って、一年くらいたった時の出来事です。 当時社長だった舩井幸雄氏が深くお付き合いしていたクライアントから、葬儀に呼ばれたことがありました。大学生の跡取りの息子さんを事故で亡くした葬儀でした。両親である夫妻の心中を誰もが察し、言葉を失っていました。その時、舩井氏が何と言ったかというと、「感謝しましょう」と言ったのです。普通の人なら、殴られてしかるべきところだと思います。しかし氏は、「10年か20年たつとお二人は、あの時は子どもを失って悲しかったけれど、私たちは勉強して支え合い、強く生きて、今は幸せにやっています、と絶対に言います。だからこれは成長のための試練だと思ってください」と伝えたのです。
私は「スゴイ」と思いました。舩井氏にしか言えないことです。また、突然そんなことを言われても、ほかの人だったら言葉の意味を受け取ることはできません。その夫妻は、常日頃から舩井氏の提唱する考え方を学び、実践していました。だからこそ、氏もこういった表現をしたのだと思います。
心理学者である小林正観氏は、人間の心には九つのレベルがあると唱えました。
① 他者が嬉しい、楽しいと思う現象について、「喜ぶ」ことができる。
② 他者が嬉しい、楽しいと思う現象について、「幸せ」を感じる。
③ 他者が嬉しい、楽しいと思う現象について、「感謝」ができる。
ここまでは〝初級〟です。
④ 他者が当たり前と思う現象に「喜ぶ」ことができる。
⑤ 他者が当たり前と思う現象に「幸せ」を感じる。
⑥ 他者が当たり前と思う現象に「感謝」ができる。
ここまでが〝中級〟です。
⑦ 他者が不幸と思う現象に「喜ぶ」ことができる。
⑧ 他者が不幸と思う現象に「幸せ」を感じる。
⑨ 他者が不幸と思う現象に「感謝」ができる。
これが〝上級〟です。
当時その夫妻が、小林正観氏のこの言葉を知っていたかどうかは分かりません。舩井氏は、相手が自分の言葉の真意をくみ取れるかどうかを判断した上で、どん底の時でもその後の人生への励ましを伝えたかったのでしょう。
レベル9超の舩井氏が、レベル9を課せられた二人へ送ったエール。私には到底できないことで、今思い返しても氏は常人の域を超えていたと、つくづく思います。
人の心を決めているのは自分。自らが鍛え、磨けば、光らせることができるもの。日々、一喜一憂しない心境で感謝しながら過ごしたいものです。
今回は、なんだか舩井幸雄氏のようになってしまいました。
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