今回から、ある企業の社長の話を中心に、「社長の最大の役割」について紹介します。この企業は、時代の変化により自社の主要な事業に陰りが見えてくることを想定し、利益が上がっている時こそ次の事業を開発するべきと、現在国内外に18のグループ会社を展開し、さまざまな取り組みを行っています。
中小企業の社長が、次世代に事業を残していくにはどうすればいいか。次号と2回に分けて説明します。
①社長に課せられた役割を自覚せよ
社長はステークホルダーとの付き合いを考えないといけません。ステークホルダーとは、企業活動に対して、直接的・間接的な利害関係を有する相手を指すビジネス用語です。お客さま、従業員、株主はもちろん、金融機関、地域社会、税務署、国や自治体も該当します。常に先頭に立つ必要はありませんが、自分がその人たちとの付き合いの総責任者であるという自覚を持ち、気を配ってください。
②トップがすべきは、先を読むこと、決めること
この企業はいわゆる裏金を一切つくらず、税金をたくさん払います。私はこの経営方針をリスペクトしています。よく税金を節約したいからと、利益を残さないように余分な経費を使ったり、裏金をプールしたりする会社がありますが、お勧めしません。
つぶれる会社には二通りあります。一つはもうからず利益の出せない会社、もう一つは利益が出ても残さない会社です。景気には波があります。例えば好況時が6年続いたとしましょう。その時にお金を残さないと、次の4年間の不況時につぶれることになるのです。悪い時に会社がつぶれないようにすることが真の経営力です。税金をたくさん払っても会社に約60%は残ります。その残した利益を不況時に使う。こうした考え方が堅実経営に大切なのです。
私が当初、数年で辞めるつもりで入社した、船井総研を長く勤め上げた理由の一つに、創業者の舩井幸雄氏も、裏金をつくらず全部「表」でやる社長だったことがあります。だからこそ、働く私たちも公明正大な気持 ちで、多くの支援先に対峙(たいじ)できたのでしょう。
目先ではなく5年先、10年先を読んだ経営が大切なのです。このことを舩井氏は「ミクロの善ではなく、マクロの善で」と説きました。
また、中小企業の役員会は決議事項(未来を決める)と報告事項(過去を振り返る)を半分ずつの時間でやるのがいいと思いますが、報告事項に時間を費やす会社がほとんどです。未来に向かって伸びるために、役員の知恵も借りながら審議できる役員会の決議事項を、もっと活用するべきだと考えます。
お問い合わせ先
社名 : 株式会社 風土
TEL : 03-5423-2323
担当 : 髙橋
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