日本商工会議所の小林健会頭は1日、定例の記者会見で、中小企業の賃上げについて「賃上げに奇策はない。原材料費と労務費の価格転嫁に加え、BtoCでは、自ら値上げする勇気を持ってほしい」と述べた。能登半島地震被災地の支援については、「(復旧から)復興、資金繰りに軸足が移りつつある」と指摘。観光業中心の産業構造に触れ、「地域を復旧させながら、並行して域外から人に来てもらうことを両立させなければならない」との考えを示した。
日商の小林会頭は、今年の春季労使交渉について「中小企業の賃上げがキーになることは間違いない」と強調。「商工会議所は、パートナーシップ構築宣言や中小企業の生産性向上などの呼び掛けを行い、政府も力を入れて支援している中で、労務費の交渉が開始するというフェーズだ。昨年よりはサポートされている」との考えを示した。
一方、小規模事業者については、「二極化している。各地の現場に足を運んで、直に中小企業の経営者の話を聞く中では、業績が良くて賃金を上げる企業もある一方、無い袖は振れないという企業もあり、規模が小さいほどその傾向は強い」と述べるとともに、「中小企業の賃上げは実態に即した伴走支援が必要だ」との考えを表明。「賃上げに奇策はない。中小企業においては、原材料費と労務費の価格転嫁に加え、特にBtoCでは、自分から値上げする勇気を持ち、自信を持って自社の製品やサービス価格を引き上げるようお願いしたい」と述べた。
発生から1カ月が経過した能登半島地震被災地への支援については、「被災4県の商工会議所の特別相談窓口に寄せられた相談件数は、1月26日現在で累計404件。当初は復旧に関するもののみだったが、復興、資金繰りに徐々に軸足が移りつつある」と指摘。また、能登地域が観光業中心の産業構造であることに触れ、「七尾や輪島など被災地の商工会議所会頭の話を聞くと、温泉と観光が重要だ。大企業のサプライチェーン寸断などの影響は大きくない。どのようにして人流を呼び戻すかが課題だ。地域を復旧させながら、並行して域外から人に来てもらうことを両立させなければならない」と述べた。
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