政府は27日、第24回「新しい資本主義実現会議」(議長:岸田文雄首相)を開催し、物価上昇を上回る持続的な構造的賃上げの実現に向けた課題と方向性などについて議論した。日本商工会議所の小林健会頭は、持続的な賃上げの実現に向けては、「春闘の対象ではない地方の中小企業や小規模事業者の賃上げも含めて議論すべき」と強調。「労務費を含む価格転嫁の商習慣化を粘り強く進めていく必要がある」と述べた。
小林会頭は、日商の調査結果で、2024 年度に賃上げを実施予定の中小企業が61.3%と前年から3.1ポイント増加したことに触れ、「賃上げの動きは中小企業にも広がりつつある。所得税減税も相まって可処分所得が増え、個人消費の回復につながることを期待する」との考えを表明。一方で、2023年の賃上げ率については、春闘集計結果(連合調査:3.58%)と毎月勤労統計調査速報(現金給与総額1.2%増)で賃上げ率に開きがある点に触れ、「物価上昇を上回る持続的な賃上げの実現には、春闘の対象ではない地方の中小企業や小規模事業者の賃上げも含めて議論すべき。これらの企業も含め、自己変革による付加価値向上、労務費を含む価格転嫁の商習慣化を粘り強く進めていく必要がある」と述べた。
また、同じく日商調査で、建設業、運輸業、介護・看護業で8割近くの企業が「人手不足」と回答していることから、「社会インフラとして企業活動や働く人の暮らしを支える業種で人手不足がさらに進めば、他の産業・企業への影響も懸念される」との見方を表明。「介護サービスにかかる公定価格の引き上げ、公共工事の労務費単価や運送業の標準的な運賃の普及などにより、賃上げできる環境の整備が急務」と強調した。
労働移動の円滑化について(企業内・企業間)は、「企業内の労働移動や定年制度の見直しは、個々の企業がその実態を踏まえ、労使のコミュニケーションを通じ検討、実施すべきもの」とした上で、「企業間の労働移動については、既に転職希望者は1千万人を超え、転職斡旋の分野で民間企業が活発に活動している。多くの中小企業経営者が自社で育成した人材の流出に極めて強い懸念と危機感を持っている点は十分理解されたい」と指摘。また、省力化に関連して、「中小企業の自己変革を力強く後押しするべく、デジタル化・ロボット活用などの支援や公的職業訓練の抜本的な強化・拡充、ハローワークや産業雇用安定センターなどによるシニア人材のマッチングなどの取り組みを進めていただきたい」と政府の対応を求めた。
会議に出席した岸田首相は、「足元では、日経平均株価が史上最高値を更新し、4万円台も視野に入ってきた。物価が適度に上昇する中で、それを超えた賃上げが消費を後押しし、新たな投資を呼び込む好循環を実現する経済を目指す」と述べるとともに、物価高に負けない賃上げに向け、「労働市場改革を進め、非ホワイトカラーの職種についても、スキル標準の整備などを通じ、ノウハウのある労働者が高い賃金を得られる構造を作り上げる。非正規雇用労働者の就労意欲を高めるため、106万円・130万円の年収の壁に対する支援策の活用も拡大する」と強調。ジョブ型人事の導入促進については、「自社のスタイルに合った導入を各社が検討できるよう、導入のプロセスや内容について指針を取りまとめる」との考えを示し、シニア層の活用に向けては、「企業には、個々の企業の実態に応じて、役職定年・定年制の見直しなどを検討してほしい」と要請した。
詳細は、https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai24/gijisidai.htmlを参照。
中小企業関連情報https://www.jcci.or.jp/sme/
雇用・労働https://www.jcci.or.jp/sme/labor/
日商AB(内閣官房)https://ab.jcci.or.jp/tag/185/
記事提供: 日本商工会議所
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