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まちの解体新書 何度も訪れたくなる 歴史・化石・ゴルフ・陶器のまち

陶器のまち 世界一の大皿「瑞祥」

美濃源氏・土岐一族と明智光秀ゆかりの地

2018年に放送された東美濃地域が舞台のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』に続き、20年のNHK大河ドラマ『麒麟(きりん)がくる』を控え、盛り上がりをみせている岐阜県。『麒麟がくる』が岐阜出身とされる明智光秀を主人公とすることから、県内では大河ドラマ放送に向けた取り組みが進められている。瑞浪市では、一日市場八幡(ひといちばはちまん)神社への土岐光衡(みつひら)の銅像設置、光秀にちなんだ戦飯や山城料理の再現などが展開されている。

明智氏の祖である美濃源氏・土岐一族発祥の地として伝わる瑞浪市。一日市場八幡神社や鶴ヶ城跡など、光秀や美濃源氏・土岐一族のゆかりの地が数多く残っている。

鎌倉時代、源頼朝に仕えた土岐光衡がこの地に本拠となる館を築き、その子孫は美濃国全土に勢力を拡大した。合戦の際、桔梗(ききょう)の花を兜(かぶと)に挿して戦ったところ大勝利を収めたことから、土岐氏の家紋は水色桔梗になったといわれている。斎藤道三の登場により土岐氏が歴史の舞台から退いた後も、庶流にあたる光秀はその水色桔梗を掲げて戦国武将として活躍した。

一日市場八幡神社は、鎌倉幕府御家人となった源土岐三郎光衡が土岐郡の地頭として土着し、最初に居館(郡戸館・河戸館・現在は一日市場館)を構えた場所と伝えられる。本殿の裏には土塁と思われる遺構が確認でき、周辺では鎌倉時代を中心とする陶磁器片なども多数採集されている。一日市場の地名は周辺で定期市が開かれていたことにちなむと考えられる。八幡神社は土岐一族の創建・勧請(かんじょう)と伝わるが、詳しくは分かっていない。現在の本殿は安政7(1860)年に建造されたものであるが、立川流の見事な彫刻が彫られている。古くは神箆と呼ばれた地で、美濃源氏・土岐一族発祥の地とされ、八幡神社境内には土岐氏の一族である「明智光秀の像」がある。

鶴ヶ城跡は、美濃源氏・土岐一族が築き、以後土岐一族が城主であったと伝えられる山城で、高野城、神箆城、土岐城などとも呼ばれ、岐阜県史跡に指定されている。瑞浪市日吉町の開元院に伝わる文明8(1478)年に描かれた月泉性印和尚頂相図(月泉性印和尚の肖像画)には「土岐城主 頼元」の文字が見られ、この頃には築城されていた可能性も考えられるが、築城時期は明らかでない。戦国時代末期には延友一族(土岐を称したが遠山一族とみられる)が城主となり、当初は武田氏に、後に信長に従って当地方を治めた。特に、天正2(1574)年の織田・武田の戦いでは、信長から小里城とともに本城が改修を命じられ、また川尻秀隆が配されて対武田軍への最前線基地となったことは広く知られている。そして、天正10(1582)年3月に武田勝頼攻めを宣し信長が進軍する際、高野城に陣を敷いたことが信長公記に残され、帯同した光秀と共に登城し、東方の仇敵殲滅の意を強くしたことであろう。関ヶ原合戦後、間もなく廃城になったことから、戦国時代そのままの土の城の姿を見ることができる。

瑞浪商工会議所 会頭 鷲尾 賢一郎 氏

美濃焼で発展した商工業都市の四つの特色

名古屋市、岐阜市へはいずれも直線で約40㎞。人口約3万7300人で、濃尾平野の北東端に位置する瑞浪市は、室町時代の創業といわれる美濃焼を中心に発展してきた商工業都市だ。一方、中央自動車道瑞浪インター周辺では、各種の文教・体育施設や公的研究機関の集積が図られており、研究学園都市としての整備が進んでいる。

瑞浪商工会議所の鷲尾賢一郎会頭は、瑞浪市を「歴史のまち、化石のまち、ゴルフのまち、陶器のまち」と表する。「私はこの地で40年ほど前に創業しましたが、瑞浪の人たちには他の地域から来た人を温かく迎える気風があると思います。企業と私を育ててくれた瑞浪に本当に感謝しています」と続ける。

大きく四つの特色のある瑞浪市だが、①「歴史のまち」とは、中山道の宿場や一里塚、美濃源氏・土岐一族や光秀、信長ゆかりの城跡や由緒ある寺院が残ることに由来する。市の北部を通る旧中山道には、現在も石畳の道や一里塚が残されており、かつての宿場町「大湫(おおくて)宿」「細久手(ほそくて)宿」の趣のある格子戸の家並みとともに、往時のにぎわいを感じることができる。

瑞浪市といえば、まちのあちこちから化石が出土し、②「化石のまち」としても全国的に知られている。世界で初めてデスモスチルスの頭骨が発見されたのはここ瑞浪市で、全国的にも珍しい「化石博物館」がある。25万点以上の化石が保管され、展示室には約3000点が並ぶ、人気の施設だ。

瑞浪市は市内に13ものゴルフ場を有する③「ゴルフのまち」でもある。中央アルプスを望む雄大なパノラマが広がる丘陵地に、リゾート感あふれるゴルフ場が点在している。「みずなみオープンゴルフ大会」も10年目に入り、3回目頃までは参加するのは市民がほとんどだったが、今や県外から大勢訪れるという。

「瑞浪でのゴルフがステータスとなり、多くの方々に何度も足を運んでいただいています。ゴルフをきっかけに、瑞浪のほかの良さも知ってもらえます。ゴルフを通じて瑞浪をもっとPRしていきたい」(鷲尾会頭)

そして④「陶器のまち」としての瑞浪。各所で焼き物と出合える。

陶器のまちのシンボルとなっているのが「陶与左衛門窯」。陶町明日に向かって街づくり推進協議会・与左衛門部会部会長の水野博文さんは、「市の南端に位置する陶町には室町時代から江戸時代にかけて多くの窯が築かれ、製品は江戸や京都へと運ばれていきました。当時の登り窯を再現したのが、国内最大級の六連房式登り窯、陶与左衛門窯です」と語る。隣接する体験工房では、絵付けや作陶体験もできる。

瑞浪が誇るブランド肉豚「瑞浪ボーノポーク」

三つのギネス世界記録®「世界一」に出合える

瑞浪と焼き物の歴史を見てみると、1475年、加藤左衛門尉景信が陶町大川の地に窯を開き、陶器のまちとして栄えるようになったといわれている。明治時代には洋食器の生産も始まり、洋食器のまちとして世界的に知られるようになった。美濃焼の産地である瑞浪・土岐・多治見は全国の陶磁器生産量が国内最大の地域を形成している。その中でも、瑞浪市の「みずなみ焼」は世界に通用するデザイン性の高さ、品質の良さを誇っている。ホテル、レストランなどの業務用のほか、家庭向けにも使いやすく丈夫で飽きのこない製品が日本国内のみならず、世界的に評価されている。

瑞浪には、そんな陶器のまちを象徴する、ギネス世界記録が三つある。

一つ目は美濃焼こま犬。1990年に制作され、高さは約3・3m、総重量は15tある。大川窯4代目羽柴与左衛門景度の作品をモデルに、市制35周年・高浜市との姉妹都市提携を記念して、地元の人々の力の結集により生まれた。

二つ目は茶つぼ「豊穣の壺」。こま犬同様、羽柴与左衛門景度がつくった茶つぼがモデルとなり、99年に制作された。延べ1万2000人の住民が制作に関わり、1年かけてつくり上げられた。高さ5・4m、直径4m、総重量32t。型を使って成型した一体成型の焼き物としてギネス世界記録に認定されている。約1万束のまきを使い、約13日間(焼成時間300時間)窯の火を絶やさずに焼き上げられたつぼには、住民の明るい未来への願いが込められている。

三つ目は96年制作で、直径2・8m、高さ30㎝、重さ1220㎏の大皿「瑞祥」。構想から完成まで1年8カ月、作業時間に10カ月を費やし、約1200度で1週間かけて焼き、延べ150人の地元の人々によってつくりあげられた。

ゴルフのまち 小学生親子スナッグゴルフ体験会

「きなぁた瑞浪」など6次産業化に取り組む

瑞浪商工会議所は、地域活性化を図るため、6次産業化にも力を入れている。その一例が2012年6月にオープンした農産物等直売所「きなぁた瑞浪」。年間60万人が訪れるという。

「きなぁた」はあたたかみを感じる言葉だが、「よく来てくださいました」を意味する方言だ。農家の庭先モールというコンセプトで、地元農家が大切に育てた安心・安全・新鮮な農産物を販売する。

鷲尾会頭が代表取締役社長を務め、瑞浪商工会議所・瑞浪市・JAとうと(陶都信用農業協同組合)の3者による第3セクター、みずなみアグリ株式会社が指定管理を担っている。鷲尾会頭は社長であると同時に、生産者の顔も持つ。栗などを出荷している鷲尾会頭が「良い情報交換の場になっている」と語るように、きなぁた瑞浪は交流の場としての役割も担っているようだ。

また、瑞浪市特産の霜降り豚肉「瑞浪ボーノポーク」のテキ肉やしゃぶしゃぶ肉、その他加工品も販売している。隣接する麺や一歩一歩では、瑞浪ボーノポークを使用したチャーシューを楽しむことができる。

瑞浪ボーノポークとは、岐阜県が開発した種豚「ボーノブラウン」と、肉質を追求した専用飼料を用いて生産された豚肉。霜降り割合が一般的な豚肉の約2倍で、肉のうまみ成分と脂の甘みが強く、豚肉本来の味を堪能できる。鷲尾会頭は「特徴が際立っている瑞浪市のブランド肉豚、瑞浪ボーノポークを、みずなみ焼、新鮮卵などに続く特産品に育てていきたい」と意気込む。

明智光秀ゆかりの「一日市場八幡神社」

東美濃地域での広域連携強化へ

瑞浪では、60回続き8月の3日間で15万人を集める「瑞浪美濃源氏七夕まつり」や、48時間での創作を競う「クレイオブジェコンテスト」など、にぎわいを創出するまつりやイベントが目白押しだ。 12月には「バサラカーニバル」が催される。2000年から始まったストリートダンスを中心としたまつりで、各チームが工夫を凝らした衣装と踊りでパフォーマンスを繰り広げる。バサラカーニバルは、瑞浪名物の年末恒例踊り納めのイベントとして定着しており、全国から毎年250チーム、約1万人の踊り子が集結する。 鷲尾会頭は今できることに全力を尽くす一方、リニア中央新幹線開通、そしてその先を見据える。「多治見、中津川、土岐、恵那、可児、瑞浪の東美濃6市の広域連携をさらに深めていきたい。それぞれの市の特徴を生かしてまとまれば、とても大きな力になります。名古屋の玄関口ともいえる多治見、リニア開通で東京への玄関口となる中津川という位置関係ですから、その中間に当たる瑞浪が引っ張っていこうと思います」。東美濃地域に今後も注目したい。

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