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まちの解体新書 異国情緒漂う チャンプルー文化のまち

沖縄アリーナ(仮称)の外観(完成予想図):スポーツイベントやライブなどを開催できる県内最大規模の屋内施設

戦後をたくましく生きてきたまち

沖縄市は、沖縄本島のほぼ中央部に位置し、空の玄関口、那覇空港から車で50分ほどの距離にあるまちだ。戦後、嘉手納基地の〝門前町〟として発展した越来(ごえく)村が1956年7月、当時わが国で唯一のカタカナ表記の市名「コザ市」となり、それから18年後(沖縄県が本土復帰した2年後)の74年4月1日、同市に隣接し、中城(なかぐすく)湾港を望む緑豊かな美里村と合併して沖縄市が誕生した。現在の人口は14万2000人ほどで、県庁所在地の那覇市に次ぐ、県下第二の都市である。

「沖縄市は、戦後日本を象徴する米軍基地の門前町です。嘉手納基地やキャンプ瑞慶覧(ずけらん)、キャンプシールズなどがあり、市の面積の約35%を占めています。また、2019年11月現在で50カ国余り、1700人ほどの外国人が居住しており、その割合は人口の約12%です。メインストリートの『コザゲート通り』は、その名のとおり嘉手納基地のゲートが起点の通りで、日本語の看板より、派手な英語の看板が目立ちます。米軍の給料日の夜には、多くの米軍人であふれ、通りの歩道はまるで外国にいるかのようです。また、この通りは、“音楽のまち”沖縄市の象徴ともいえるライブハウスが多いことも特徴です。ジャンルはロックから沖縄民謡までと幅広く、その昔、米軍人の前で、日本人バンドがロックを演奏したところ、その技術の未熟さからビール瓶が飛んできたという逸話も残っています。その後、努力を重ね、今では本場をしのぐレベルのバンドも誕生しています。そのメンバーも、今や日本人だけでなく多国籍化していて、まさに『チャンプルー文化』(豆腐と野菜を中心にさまざまな素材を混ぜ合わせて炒めた沖縄料理チャンプルーになぞらえた、伝統文化と異文化が融合した国際色豊かな沖縄文化のこと)を、地でいっている通りです。また、当市はプロ野球『広島東洋カープ』の春季キャンプ地、Bリーグ『琉球ゴールデンキングス』とJリーグ『琉球FC』のホームタウン、Vリーグ男子『パナソニックパンサーズ』のサブホームタウンです。特に室内で行われるバスケットボールやバレーボールの試合は選手と観客の距離が近く、エキサイティングです」と紹介してくれるのは、沖縄商工会議所の宮里敏行会頭だ。

「18年下期に直木賞を受賞した真藤順丈さんの『宝島』をご存じですか。1952年から72年の本土復帰時まで、当時、まだコザ市と呼ばれていた時代が舞台の小説です。米軍基地に忍び込んで物資(食料品や生活必需品など)を盗み、それらを地域住民に分け与えたり、それらを売って生活の糧としたりした『戦果アギャー』(戦果をあげる者)の若者たちが描かれています。この小説から、沖縄の人たちが、戦後、どのように生きてきたかの一端を知ることができます」

関連して「通説によると朝鮮戦争が始まった後、米軍と対峙した北朝鮮軍兵士が米国製の銃を持っていたことがあったそうです。その銃は沖縄の米軍基地から盗まれたものではないかといわれ、その後、基地の警備が一層厳しくなったというエピソードも残っているんです」と宮里会頭は話す。

沖縄商工会議所 会頭 宮里 敏行 氏

一万人規模アリーナに期待高まるまち

「沖縄の人たちは、米国文化に触れる機会が多かったため、スポーツではバスケットボールが大好きです。皆、子どものころから、ストリートバスケットで遊んでいましたから」と宮里会頭。それを裏付ける興味深いデータが、2016年に総務省統計局が発表した『社会生活基本調査』に載っている。同調査によると、25歳以上のバスケットボール人口(この1年間でバスケットボールをしたという人の数)は全国で155万人。それを25歳人口100人当たりに換算すると1・57人となるが、沖縄県のそれは2・60人で全国1位。2位神奈川県の2・06人を大きく上回る。

こうした特徴や1996年に当市が「スポーツコンベンションシティ」を宣言したことなどを背景に、当市の新たなランドマークとして、かつ地域活性化の起爆剤として期待されているのが、来年度(2020年度)中に完成予定の“一万人規模の多目的アリーナ”だ。「沖縄県への観光客数は、18年度に年間1000万人を突破しました。内訳は、日本人が700万人、外国人が300万人です。ただ、当市に宿泊する観光客はいずれも少なく、素通り観光のまちといわれています。こうした中、このアリーナの完成は、大きなチャンスです。2年後の22年には、Bリーグオールスターゲームが、さらに3年後の23年9月には、FIBAバスケットボールワールドカップ(フィリピンをメイン会場に、日本とインドネシアの3カ国共催)の予選ラウンドが、それぞれ開催されるため、国内外から多くの来場が見込まれます。また、このアリーナは、他のスポーツイベントや見本市、コンサートなども開催可能で、将来、南国沖縄でアイスショーを見ることができるかもしれません。なお、一番の課題は、このアリーナに来られたお客さまを、いかに『コザゲート通り』などの中心市街地に誘導し、市内を回遊・宿泊してもらうかということです。当所では、地域の商店街や関連団体・企業、市などと連携し、アリーナ完成をきっかけに素通り観光のまちから、滞在型観光のまちになれるよう、飲食の充実や交通体系の整備、宿泊施設の誘致、さらには台湾や香港をはじめとするアジア圏に近いという地理的メリットも生かしたまちづくりを推進していきたいと考えています」(宮里会頭)

広島東洋カープ春季キャンプ:昭和57(1982)年から続く。カープ女子など多くのファンが来場。数多くの名選手がここで生まれた

大型プロジェクトで未来を切り開くまち

「実は、一万人規模のアリーナ建設のほかにも計画されている大型プロジェクトがあるんです」と宮里会頭。「その主なものの一つが、市内東部の中城湾港(泡瀬地区)で進む『東部海浜開発計画』です。この計画は、スポーツコンベンション拠点の形成をコンセプトに、『スポーツ』『健康・医療』『交流』をキーワードとし、その基本方針は『海に囲まれた緑豊かな環境の中で、スポーツや医療・保養などを通じて県民や市民、観光客が交流・健康づくりを行える空間の創出』というものです」

また、この計画の意義を「沖縄本島は、西海岸地域に那覇市などの都市と商業機能が集中しています。この計画による本島中部圏の東海岸地域の開発が、本島の両海岸のバランスの取れた発展にもつながるものと期待しています」と宮里会頭は語る。

具体的な中身について、宮里会頭は「中城湾港(新港地区泊地)の浚渫土砂で、同泡瀬地区の埋め立てを行い、総面積95haの人工島を建設します。そこに市街地近接では県内最大となる約900mの人工ビーチが整備されるほか、健康医療施設、多目的広場、交流施設、宿泊施設、野鳥園・外周緑地、商業施設、栽培漁業施設、マリーナなどが設けられる予定です。現在、埋め立て工事はほぼ終わり、『潮乃森』と命名されたこの人工島には、仮設の橋が架けられ、他の施設より先に整備された人工ビーチでは、夏になると当計画のPR。このビーチから太平洋の大海原を望む景色は絶景で、私の好きな風景の一つです。私は、この計画を推進する市内31団体で構成される『東部海浜開発事業推進協議会﹄の会長を務めており、2020年代中の完成に向けて活動しているところです」と話し、民間主体で取り組む姿勢を見せる。

東南植物楽園:(左:植物園エリア)日本ではここでしか見られないユスラヤシの並木通りは圧巻。(右:水上楽園エリア)ほかではなかなか見ることができない貴重な熱帯亜熱帯の水辺の植物を中心に見ることができる

エイサーで元気づくまち

前述の大型プロジェクトが進む沖縄市。一方で忘れてならないのは、毎年旧盆の時期に行われる「沖縄全島エイサーまつり」(以下、全島エイサーという)だ。昨夏は開催3日間で35万人が来場、今夏(2020年)で65回目を迎える沖縄の伝統行事であり、夏の風物詩でもある。

戦後、当時のコザ市(現沖縄市)にオフリミット(米軍人、軍属、家族が民間地域へ出入りすることを禁ずる規制)が敷かれたことで、基地に依存していた商業都市コザの経済は大打撃を受け、暗く落ち込んでいた時期があったという。そんな時、戦後復興のシンボルでもあったエイサーで元気を取り戻そうと、1956年に始まったのが、現在の全島エイサーの前身「エイサーコンクール」だ。

第1回は沖縄全島から選抜された九つの青年会が出場し行われた。その後、順位を競うコンクール形式での開催は76年の第21回で終了。翌77年の第22回からは順位を問わない全島エイサーに衣替えし、現在に至っている。

エイサーの起源は諸説あるが、「仏教が琉球に伝来して以降、広まった盆行事と念仏教を起源とする」という説が有力とされる。念仏教が長い年月をかけて流行(はや )り歌に変貌、各地域で異なるエイサーが生まれたのではないかといわれている。また、エイサーという呼び名の語源についても諸説あり、今なお検証が続いている。

沖縄市は、2007年6月13日、エイサー文化の継承・発展、青少年の健全育成などを推し進めるため「エイサーのまち」を宣言。今では、この宣言日(6月13日)を皮切りに、それ以降、複数地域の青年会が毎週エイサーを披露し、旧盆の全島エイサーに向けて、徐々にムードを盛り上げている。

また、18年3月25日には、沖縄のエイサーに関連する展示や体験型コンテンツなどを通じて、歴史や文化を学べる「エイサー会館」が、胡屋(ごや)十字路近くのコザミュージックタウン内にオープンした。同会館2階(有料ゾーン)の展示・体験コーナーでは、実際にエイサーの衣装を身に着けた上で太鼓をたたいて踊れたり、VR(仮想現実)により、エイサーの隊列の中にいるような映像を観賞できたりと子どもから大人まで楽しめる。

「沖縄市といえば、やはりエイサーが一番楽しめるかもしれないですね。エイサーは、もともと旧盆に行われる先祖供養の行事ですが、今や沖縄を代表する伝統行事です。全島エイサーは、道ジュネー(沖縄の方言で「旧盆に地域を練り歩く」の意)から始まりますが、迫力ある太鼓の音、癒やし効果があるという三線の音色、そして躍動感あふれる演舞には、魂が揺れますし、自然に体が動くような感じがします」と、これまで多くの人たちを元気付けてきたエイサーの魅力を、宮里会頭は熱く語る。

進行する大型プロジェクト、エイサーなどの伝統行事、そして米軍基地などが混在する沖縄市。多種多様な文化を融合した「チャンプルー文化」により、昭和、平成を経て、令和の時代に大きく羽ばたこうとしている。今後の動向から目が離せない。

沖縄こどもの国:県内唯一の本格的な動物園。希少なホワイトライオンのリズム(右)が人気。亜熱帯の特性を生かして日本一ユニークな動物園を目指す

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