戦闘機は現代戦における最強の兵器である。攻撃の要だから先端技術を組み込む改良が重ねられる。いまの主力は最新鋭ステルス機F35に代表される第5世代である▼
戦闘機の能力はむろん防衛にも発揮される。地対空ミサイルとともに領土領海の制空権を堅持するために不可欠の兵器でもある。第二次世界大戦における日本は、航空戦力を著しく消耗した結果、制空権を失い、全国の都市への空爆、果ては核兵器の投下すら許した▼
戦闘機をはじめ兵器を造るのは企業である。新兵器を開発できたとしても、納入先が防衛省(自衛隊)だけでは採算面で二の足を踏む。だから国際共同開発の場合も、第三国への輸出によって、兆円単位にのぼる開発費の回収を早めるのが主流である▼
日本が現行F2の後継機となる次期戦闘機を、英国、イタリアと共同開発することに合意したのは22年12月だ。29年までに設計を完了し、35年からの配備を目指す。英伊は現行ユーロファイターの後継機である▼
政府は14年、従来の武器輸出三原則を転換し、防衛装備移転三原則に改め、一定条件のもとに武器輸出を可能にした。昨年末にはミサイルなどもライセンス保有国に輸出できるようにした。今回の共同開発では、日本が求める性能を組み込むために、英伊が求める第三国への輸出問題に譲歩するかどうかが焦点だった▼
自民、公明の与党間でこの輸出を認める合意ができたのは先月15日である。運用指針を改定し、攻撃兵器である戦闘機の輸出が解禁される。武器輸出に抑制的だった方針の転換である。むろん輸出に際しては一定の条件を課し、かつ個別に閣議決定するという。だが憲法が求める平和原則、国会の監視も忘れてはなるまい。
(コラムニスト・宇津井輝史)
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