『AKIRA』『機動警察パトレイバー』『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』……。いずれもアニメ、マンガ、ゲームなどのサブカルチャー史において重要な作品ばかり。
これらのアニメ、しかも「背景美術」に着目した展示が、谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館で開催された(2023年6月17日~11月19日)。19年には大英博物館でマンガの展覧会が開催されるまでになっており、サブカルチャーが国内外の美術館で扱われることそのものは、もはや珍しくない。
しかし、今回は「建築館」だ。しかも、東京ではなく、金沢。これは行かねばなるまいと「アニメ背景美術に描かれた都市」展を訪ねた。ゾンビ先生は、特に『機動警察パトレイバー2 the Movie』が好き過ぎて、後藤隊長と荒川のセリフをすぐに言えるほど繰り返しDVDで鑑賞している。本作および劇場版1作目では、東京の風景が実に印象深く描かれる。その背景美術を拝むことができ、大げさでなく少し泣いてしまった。
同館専門員の髙木愛子氏によると、期間中の観覧者数は1万2129人を数えたという。私のような作品ファンはもちろん、建築に関心のある人、なんと、現役のアニメーターなども来場した。
それにしても、なぜ金沢なのか。企画者の一人である明貫紘子氏に聞くと、「背景美術監督たちをアーティストとして、サブカル文脈ではない形で紹介するのに金沢建築館がふさわしいと感じた」と言う。さらに、文化や政治の東京への一極集中に対する違和感も込められている。「今回展示した背景美術の作品は、いずれも過剰な都市開発への批判が見られる」と指摘。それを地方から問う。今回の展覧会にはそういう意図があったのだ。
コンテンツは実にさまざまな面で場所や人、事物とつながっている。その「つながり」を独自の視点で見いだし、多くの人々に移動を促し、その魅力やメッセージを伝えた見事な取り組みである。
最新号を紙面で読める!