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被災地会議所訪問概要 復興まだら、加速化必要

日本商工会議所では東日本大震災後、津波などで甚大な被害のあった岩手県、宮城県、福島県の沿岸部商工会議所を中心に役職員が訪問し、正副会頭などから復興に向けた意見・要望の聞きとりを毎年実施している。その内容は要望書(4面参照)に反映し、政府など関係先に広く要望している。特集では、2018年11~12月の訪問概要を紹介する。

宮古商工会議所(岩手県)

「防災地区」として注目の田老地区防潮堤を視察する日商青山局長ら一行

日商の青山伸悦理事・事務局長は11月9日、岩手県宮古市の宮室フェリー株式会社と田老地区を訪問視察し、同所の花坂康太郎会頭らから話を聞いた。 宮室フェリーでは、花坂会頭から宮古―室蘭(北海道)間を就航しているフェリーについて「乗船客数は目標値を上回っているが、トラック便などの貨物は目標値に達していない。これまで毎日1便(宮古→室蘭→宮古)就航していたが、2018年10月から日曜便が廃止された。その一方で宮古―室蘭間に八戸(青森県)の寄港が追加された。八戸は高速道路の直結地であり、トラック便の利用が見込まれる」と説明があった。また「19年竣工(しゅんこう)予定の三陸沿岸道(無料予定)が開通すると仙台まで3時間、宮古盛岡横断道路(無料予定)が開通すると盛岡まで1時間半となる。これらの開通でトラック事業者のフェリー利用が促進される」と期待感を示した。 田老地区では、花坂会頭から「過去2回の津波被害を教訓に防潮堤や避難道路などを整備し『防災地区』としての確立を進めてきた。1933年の津波では、市民の約8割が犠牲となったが、東日本大震災では約4%と、ハードの整備が減災につながった。また『学ぶ防災』拠点として、同地区を訪れる観光客や修学旅行生が増えており、現在まで延べ15・5万人を受け入れた。今後は自主防災の推進を図っていきたい」と話があった。

釜石商工会議所(岩手県)

今秋、W杯で2試合開催される「釜石鵜住居復興スタジアム」を視察

日商の青山伸悦理事・事務局長は11月9日、岩手県釜石市鵜住居地区を訪問視察し、同所の山崎長也会頭らと懇談した。 山崎会頭から「会員事業所の約56%が被災した。現在、大半が事業を再開しているものの、仮設店舗がほとんどであり、事業再建は道半ばである。ラグビーワールドカップを契機に、地域を盛り上げていきたい。他方、ワールドカップ後のスタジアムの活用が課題となっている」と話があった。その後、同所事務局から「土地区画整理地域に指定されている鵜住居町は、区画整理にめどがつき、仮設住宅から住宅着工に移行しつつある。しかしながら、復興需要が落ち着き、人手不足あることから宅地再建には課題が山積している」と話があった。 続いて山崎会頭からも「区画整理について市内全域に目を向けてみると、かさ上げなどが難航している」とインフラ整備に関する話があった。 これを受けて青山局長は「被災地域ではインフラ整備が特に重要である。20年に復興庁が閉庁し、復興・創生期間が終了する予定であるため、復旧事業に従事していた作業員が釜石から転出していると聞く。定住人口や交流人口を確保し、釜石の活性化を図らなければならない。日商としても、自動車道の工期遅延のない整備と復興・創生期間終了後の対応などについて、19年2月の復興要望に盛り込んでいきたい」と述べた。

大船渡商工会議所(岩手県)

正副会頭らから現状説明を受ける日商石田専務理事ら一行

日商の石田徹専務理事は12月10日、岩手県大船渡市を訪問視察し、同所の齊藤俊明会頭らと懇談した。 齊藤会頭から「(18年12月現在で)震災から7年9カ月経過し、仮設店舗から本設店舗に移転するなど復興は着実に進んでいる。しかしいまだ200人弱が避難生活をしており完遂はしていない。また、かさ上げ工事が未完の場所や19年あたりからようやく住宅着工が始まる地区もある。時間の経過とともに、身の振り方をどうするか悩む被災者も多くなってきている」と話があった。 これを受けて石田専務理事は「ハード整備に加え、ソフトの支援が重要だ。販路開拓はもとより、人手不足への対応や事業承継などは被災地に限らない大きな課題である。20年度で復興・創生期間が終わるが、国も何かしらの検討を行っていると聞いている。要望を取りまとめ、政府に働き掛けたい。せっかくの機会なので、今後の見通しや独自事業の取り組みなどについても話を聞きたい」と述べた。 齊藤会頭は「復興・創生期間の終了に伴い、現在の工事案件も終われば復興特需も終わる。作業員なども出ていき、残るは市民だけ。観光ホテルはビジネス向けに転換し、大型の土産店も閉鎖した。これからは交流人口に目を向けなければならない。その拡大には『面白い』『楽しい』といえる体験施設などが必要ではないか」と述べた。

塩釜商工会議所(宮城県)

モニタリング検査を行い、安全なかまぼこを出荷する水野水産を視察

日商の青山伸悦理事・事務局長は12月7日、宮城県塩釜市の水野水産などを訪問視察し、同社および同所の桑原茂会頭らから話を聞いた。 水野水産では「1960年のチリ津波の教訓から工場を1・2メートルかさ上げしていた。東日本大震災の2メートルの津波で1階の大半が浸水したが、天井の配電設備は無事だったことから、工場の1階と2階に分けていたかまぼこを揚げるフライヤーのうち、2階のフライヤーを使って早期に事業を再開できた」と復旧に対する説明があった。 続いて桑原会頭から「足元の課題は漁獲量が減少していること。震災復興は順調に進んでおり、ハードは目に見える形で復旧してきた。しかし、ソフト面の復旧には時間がかかる印象がある。人手不足も深刻化している。販路開拓、外国人労働者の活用は大きな課題である」と話があった。 これを受け青山局長は「震災後5回ほど訪問しているが、そのたびに復興が進んでいると感じている。人手不足は被災地に限らず全国で深刻化している。外国人労働者の活用が期待されているが、入管法の改正などの法整備と、その運用をしっかりしなければならない。復興・創生期間の終了に向けて、足元の課題にしっかり取り組むとともに、あと2年で復興が終わるものではないため、中・長期的課題を見据えた対応を要望していきたい」と述べた。

石巻商工会議所(宮城県)

14年に新社屋を建設した、たらこ製造の湊水産を視察

日商の青山伸悦理事・事務局長は12月7日、宮城県石巻市を訪問視察し、同所の浅野亨会頭らと懇談した。 浅野会頭から「復興は着実に進んでいる。堤防など一部に遅れが見られるが、8割くらい回復してきていると実感している。一方、若者の都市部への流出による人口減少や高齢化が加速している中、今後どのようなまちづくりを進めるかが課題だ。石巻には水産、工業、農業、商業と複数の産業が存在しており、意思統一を図るのが難しい。20年の東京オリンピック・パラリンピックにおける聖火リレーのスタート地にはなれなかったが、アテネから入る聖火を展示する復興の火が灯されることが決まった。受け入れ式などのイベントを誘致したい。また、交流人口を増やす仕掛けとして、音楽プロデューサーの小林たけし氏がプロデュースするイベント(リボンアートフェス)を行うなどの活動を展開している」と話があった。 また「当所会館も立派になったので、そこで働くわれわれも負けないように切磋琢磨していきたい」と今後の抱負を語った。 これを受けて青山局長は「復興・創生期間があと2年で終了する。復興が終わって何もないではダメだ。持続可能な産業が必要となってくる。中長期課題として、定住人口・交流人口の拡大は大切である。行動計画やビジョンを示すことも大切である」と述べた。

気仙沼商工会議所(宮城県)

気仙沼・内湾のにぎわい創出の期待を背負う観光集客施設「迎」を視察

日商の石田徹専務理事は12月7日、宮城県気仙沼市の角星(酒蔵)および阿部長商店(水産業・観光業など)などを訪問視察し、同所の菅原昭彦会頭らから話を聞いた。 菅原会頭は現状について「市が毎月発表している調査では、復旧済みとする回答は68・8%、7~9割程度回復したとする回答が12%」であり、相場観として7~8割程度は回復しているとの認識を示した。震災前との売り上げ比較では「増えた27・7%、減った46%、横ばい26・2%」で依然厳しい状況が続いていると述べ、今後の課題は「販路の確保(19・1%)、人材不足(14・3%)、資材の高騰(10%)」であるとした。一方、「スローフードの施設を津波立地補助金で建設する予定。1年以上遅れたがようやく復興庁が認めてくれた」という明るい話題も提供された。 角星は、震災後の状況について「売り上げは震災前に戻ったが販路が大きく変わった。以前は地元9割、仙台・東京などが1割だったが、現在は地元5割、仙台・東京などが5割。地元に販路がなかったため、積極的に販路開拓に取り組んだ結果」と話す。また、阿部長商店は、「売り上げは震災前に戻っていない。漁獲高は震災前の70%強。魚種の変化や物流、資材、人件費が高騰している。生鮮と冷凍に加え、震災後は水産加工に力を入れて新たな販路の獲得に取り組んでいる」と、復興途上との認識を示した。

いわき商工会議所(福島県)

18年7月から部分的に再開した「Jヴィレッジ」を視察

日商の久貝卓常務理事は11月19日、福島県いわき市を訪問視察し、同所の小野栄重会頭らと懇談した。 小野会頭は、現状について「震災直後からここまで回復するとは想像できなかった。この回復ぶりを見ていただくことで、風評の払拭(ふっしょく)につながるだろう」と述べた。また「風評がまだ根強いが、今年から「風評」という言葉を使うなと徹底している。安心・安全であることは、知識のある人たちは分かっているが、感情的なものや、政治的な背景があって、受け入れられない現実があると捉えている。漁業が今一番苦しいが、加工品も含め、世界一安全であることは間違いないので、自信を持ってPRし、商工会議所としてはバックアップしていくことが大切」と話した。 これを受けて日商の久貝常務理事は「いわきに来るたびに復興が進んでいると実感する。特に浜通りが福島の復興をけん引している印象がある」と述べ、さらに「農産物はかなり回復しているのではないか。福島の桃は、これまで価格が3割程度カットされていたが、今年は価格が回復するなど、よい動きが見られる。前に進む材料となればよい。20年の東京オリンピックも復興五輪との位置付けでさまざまな取り組みが始まっている。これを機に福島県産の食品を、世界中の人々に味わってもらうことが実現できるとよい」と期待を込めて話した。

原町商工会議所(福島県)

日商久貝常務理事(右)に要望書を手交する高橋会頭(右から2人目)

日商の久貝卓常務理事は12月14日、福島県南相馬市を訪問視察し、同所の高橋隆助会頭らと懇談した。 高橋会頭は「(18年12月現在)震災から7年9カ月が経過した。当所は、東京電力福島第一原子力発電所から30キロメートル圏内の全国で唯一の商工会議所である。19年は新しい年号となり、一つの区切りを迎えるが、地域の実態を見て聞いていただき、全国へ周知していただきたい」と述べた。続いて、渋佐克之副会頭はロボットフィールドについて「未来をつくり上げるものとして大いに期待している。つくって終わりではなく、どう利用していくかが課題。多くの人に関心を持ってもらい、ぜひ利用してもらいたい。今後、ロボット事業の誘致を行いたいので、力を貸してほしい」と話した。遠藤充洋副会頭からは「復興工業団地を計画している。当所では引き続きPRに尽力していくが、企業誘致の周知などに協力いただきたい」との要望が寄せられた。 これを受け久貝常務理事は「ロボットテストフィールドの活用については、企業や大学、研究機関と連携し、利用が進むように支援していくことが重要であると感じた。研修施設としてもPRを行ってくことも重要ではないか」との見解を示した。また、原町商工会議所の取り組みに対して「前向きに取り組んでおられ、感銘を受けた」と話した。

相馬商工会議所(福島県)

18年3月操業のエネルギー供給重要拠点・相馬LNG基地を視察

日商の久貝卓常務理事は12月14日、福島県相馬市を訪問視察し、同所の草野清貴会頭らから話を聞いた。 草野会頭は、現状について「観光復興キャンペーンを毎年行っているが、今後は“復興”の2文字を取り、観光に一本化していく。17年に海水浴場を再オープンしたが、復興までは至っていない」と述べた。 また、「相馬は港町で、水産業が盛んなため、6次産業化を進め、魚をどう売っていくかが課題」と話した。道路については「一部未開通であるが、ある程度完成してきており、車・人の動きが活発になってきた。先日、市長が会長を務める工業団地の誘致会議があり、事業所誘致で米沢を訪問した。米沢まで道路が開通したので、米沢・福島・相馬で連携を取っている。米沢は福島県との交流で、働く人・訪問する人が増えるのではと考えている。道路の開通で、米沢は日本海に出るよりも太平洋側が近くなった」と話しており、今後の展開に期待を示した。 中沢正邦副会頭は、風評被害について「徐々に解消されてきている」と述べる一方、「魚介類の価格は以前に比べて下がったまま。特にヒラメは、タイに一度輸出したきりだ。震災前は宮内庁へもヒラメを納めていたが、まだ再開できていない。相馬に実際に来て見て食べてもらいたいと思っている。そのためには交通網整備が重要」との見解を示した。