「文化を纏う」アパレルブランドで伝統工芸の未来を切り開く
株式会社Dodici 代表取締役 大河内 愛加(おおこうち・あいか)
ミラノでの起業と京都での新たな試み
私たちが運営するアパレルブランド「renacnatta(レナクナッタ)」は、以下の三つの素材に着目し、展開しています。
①使われなくなったデッドストック
②廃棄予定の着られなくなったもの
③以前よりつくられなくなった斜陽産業の素材
ブランド名は、これらの「れなくなった」素材を活用することに由来しています。
私がブランドを立ち上げた背景には、日本とイタリアに対する強い思いがあります。15歳でミラノに移住し、東日本大震災の際、周りのイタリア人が日本の家族や友人を心配してくれたことがきっかけで、日本人としてのアイデンティティーを再確認しました。この経験を通じて、母国日本のことをもっと知りたい、伝えたいという思いが芽生えました。
ミラノに住んで10年目、着物にインスピレーションを得た巻きスカートのアイデアが生まれたのです。素材には日本とイタリアのデッドストックを使用しました。流行や年齢、体型にとらわれず長く着られることを目指し、「文化を纏(まと)う」というコンセプトを掲げました。
その後、日本の伝統産業に直接貢献したいと考え、京都にも拠点を設けました。デッドストックに加え、今も続く伝統工芸の技術を守り続ける職人や織元とのコラボレーションも始めました。現在は、全国各地の伝統産業を営む人たち とものづくりをしています(西陣織、金彩、漆、久留米絣など)。
新しい価値を生み出す 着物づくりに挑戦
現在、私たちは新たな挑戦として、着物づくりに取り組んでいます。コンセプトは「一生着られる振袖」。振袖は、華やかで特別な装いでありながら、着る機会が限られ、現代はレンタルが主流となりつつあります。しかし、振袖が日本の伝統文化に触れる貴重な機会であるのに、購入が減少し、生産が減るのは惜しいと感じました。
そこで、私たちは「袖を切ることで、振袖が訪問着としても着続けられるデザイン」に挑みました。この考え方は、イタリアで学んだ「美しいもの、本物、長く使えるものを大切にする」という哲学が基盤にあります。振袖としても、訪問着としても成立するデザインを目指し、職人との緊密な協力を経て、丹後ちりめん、引染め、手描き友禅など、さまざまな技法を取り入れました。
美しさと本物を追求しながらも、ただ美しい着物をつくるだけでなく、職人の手仕事の魅力や価値を伝えることにもこだわりました。この着物を通じ、日本の伝統工芸の素晴らしさ、その未来を支える意義を伝え、新しい価値を生み出し続けたいと考えています。
弊社が掲げる経営理念は「伝統工芸の未来を書き換える」です。日本にある伝統工芸の多くが斜陽産業といわれています。人材不足や変化する需要など、さまざまな課題を抱えている中、衰退していく未来ではなく再び日本の文化を彩る産業になる未来へと、私たちは書き換えていきます。
会社データ
社名 : 株式会社Dodici(ドーディチ)
所在地 : 京都府京都市中京区雁金町373 みよいビル207
電話 : 050-5438-7764
創業 : 2016年
事業概要 : 織物・衣服・身の回り品小売業
HPはこちら : https://www.renacnatta.com/
※月刊石垣2024年10月号に掲載された記事です。