朝礼時の体操に取り入れ、体力面と社内コミュニケーションの向上を図る
JFEスチール西日本製鉄所(倉敷地区)からほど近い弘化産業は、行動災害リスク低減のため、今年から「アクティブ体操®」を取り入れ、全社を挙げて「安全体力®」の向上に取り組んでいる。1年分の成果を数値で測る2025年年明け早々の「安全体力®」機能テストを待つまでもなく、効果も見えてきたという。
加工材料の多様化により高齢社員や女性も就労可能
JFEスチールや三菱自動車工業、ENEOS、中国電力などの大企業8社を筆頭に、大小200を超える企業が集積する倉敷・水島コンビナート。その一角に操業する弘化産業は1969年に波型スレートの加工会社として始まった。現在は建物外装の施工や各種電気工事に加えて、建材や梱包資材の生産加工、製缶板金加工まで手掛ける、実績豊富な“モノづくり”系企業だ。 「弊社のモットーは『first-call-company』です。お客さまの課題に関し、『とりあえず弘化産業さんにお願いしてみようか』と最初に思っていただける企業でありたい。先代の頃から意図して業容拡大を続けてきたのも、お客さまが相談しやすい体制を整える狙いからです」と、現社長の福武邦明さんは語る。
同社の従業員の年齢構成は2024年現在、20代12人、30~40代12人、50代8人、60代7人。定年は60歳だが、そこで退職する社員はまずいない。過去には83歳まで勤めた社員もいた。現在の最高齢社員は78歳だ。加工する材料の種類が多岐にわたり、軽量素材も多く手掛けるため、高齢社員や女性作業員も無理なく働けることが、生産力の安定という同社の強みにつながっている。
従前の体操にはなかった「アクティブ体操®」の効果
同社が「アクティブ体操®」を取り入れたのは、以前から続けていた朝礼時の体操の効果に関し、福武さんが長年疑問を持っていたことがきっかけだった。そこに昨秋、JFEスチール西日本製鉄所の総務部門(渉外担当)を長年経験し、定年退職した松下和統さんが営業本部長として入社。JFEスチールで「アクティブ体操®」の有効性を目の当たりにしてきた松下さんはさっそく福武さんに「アクティブ体操®」の導入を提案。プライベートでもスポーツ好きの福武さんは「アクティブ体操®」の内容が優れていることをすぐ理解し、今年正月の仕事始めから、朝礼時の体操を「アクティブ体操®」に切り替えた。 「就業前の体操そのものは前からやっていて、内容が変わるだけでしたから、素直に受け入れてもらえました。動きはもう全員がマスターしています。来年正月に二回目の『安全体力®』機能テストを行う予定で、その時に一年分の成果が数字で分かりますが、見る限り、既にもう、みんなの体力が明らかに上がった気がします。結構ハードな動きをしますし、筋が伸びるので、昔は朝の体操に並ぶ時に変な歩き方をする社員が割といたのが、最近は見なくなりました。私も腰が楽になりましたし、肩甲骨の動きが良くなってゴルフの飛距離が伸びました。これはうれしい誤算でしたね」
さらに、松下さんと竹原利一生産部長は次のように語った。 「特に片脚立ちの動きは、その日の体調が悪かったり不安なことがあったりすると、明らかにフラつきます。それを責任者が目に留めて、『今日は彼のことを特に注意して見ておこう』という感じで事故を未然に防ぐというようなことも、自然にできていると思います」
つまり「アクティブ体操®」の効果は体力向上にとどまらず、動きそのものが作業者の心身の状態を映す鏡としても機能する結果、事前にヒヤリハットの芽を摘むという形で労務管理面の効果も期待できるのだ。
また、同社では「アクティブ体操®」を営業担当者と現場担当者が向かい合って行っている。これは福武さんの代になって始めたスタイルだ。その狙いについて福武さんは、「営業が契約してきた仕事を現場が『こんなの無理』と言って突き返すうちにお互いの仲が悪くなるというようなことは、よくある話だと思います。幸いにも当社はそういういがみ合いはありませんが、それでもやはり、お互いの顔を見て仕事をするというのは大事なことだと思うので」と語る。
新たに「アクティブ体操®」を取り入れた当初は、初めての動きに戸惑う人、動きを間違えて恥ずかしそうにする人、次の動きを覚えていなくて周りの動きをたどたどしくまねる人などがいて、実にさまざまな表情が見えたという。それらの表情を社員同士互いに見るうち、普段の業務でも、高圧的で苦手だと感じていた相手に話し掛けやすくなったり、困っている同僚に声を掛けやすくなったりといったソフト面の変化が生じた。
今後の事業展開も人的資本の確保があってこそ
今後の事業展望について、同社は次の四つのテーマを掲げる。
①オリジナル製品の開発。「顧客のお困りごとに応える従来の姿勢に加えて、攻めの事業も展開したい」と福武さんは語る。目下、全社的にアイデアを募集している。
②コンビナートとの取引強化。この点に関しては松下さんの活躍による部分が多そうだ。JFEスチール時代からコンビナート企業の大半と付き合いがある松下さんの人脈に、福武さんは大きな期待を寄せている。なお、松下さんと乍さんは社会人野球の川崎製鉄(現JFEスチール)野球部で監督とヘッドコーチだった間柄だ。
③公共工事への参入。具体的には、期が替わる来年4月に倉敷市の公共事業入札への参加を予定している。創業から半世紀強にわたり蓄積してきた知見と、first-call-companyの精神で、これまで以上に地域に貢献したいという。
④「大手企業が手を引く家内工業的な作業を効率よく行うこと」と福武さん。既存の事業内容についても、作業効率と生産性の向上を常に意識し、マンネリ化に陥らない事業展開を期す構えだ。 いずれも人的資本(労働生産力)が強固に確保されてこそ取り組める課題だ。その意味で、「アクティブ体操®」と「安全体力®」機能テストが果たす役割は決して小さくないといえるだろう。
会社データ
社 名 : 弘化産業株式会社(こうかさんぎょう)
所在地 : 岡山県倉敷市連島町鶴新田2177-1
電 話 : 086-448-5676
HP : https://www.big-advance.site/c/141/1337
代表者 : 福武邦明 代表取締役社長
従業員 : 39人
【倉敷商工会議所】
※月刊石垣2024年12月号に掲載された記事です。