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アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 ネットに押されぬアジアのリアル書店

台北市の中心部にある個性的で主張のある誠品書店

日本や米欧など先進国では、リアル店舗の書店(リアル書店)が厳しい逆風にさらされている。言うまでもなく、米アマゾンをはじめとするネットでの書籍販売が急成長しているからだが、もともと書店が少なかったアジアでは逆に今、リアル書店が存在感を高めつつある。経済成長に伴い、人は実用的な知識、人生に必要な教養、世界の動向、エンターテインメントなどさまざまな情報を得るために本を求めるようになり、「本を探し、選ぶ」という点では、ネット書店よりも、手に取って本の内容を確かめられるリアル書店のほうが力を持っているためだ。

市民のショッピングエリアになっている台北市の中心部、MRT中山駅周辺に昨年9月、地上5階、地下2階の「誠品生活」のビルがお目見えした。台湾大手の誠品書店が経営する雑貨、インテリア、ファッションなどのセレクトショップが入居するショッピングモールで、日本の猿田彦珈琲店も出店するなど、書店と相性の良い個性的な店を集めている。4階の誠品書店は巨大というほどではないが、平積みや書棚の本の選択に書店側の意思が感じられる「物言う書店」。また、同店は中山駅の地下に歩行者通路と並行した細長い売り場の店をつくるなど「挑戦する書店」でもある。

今年8月、中国で最高層の上海センタービルの52階に朶雲書院が開店した。高さ239mの世界で最も高いフロアにある書店だ。中国には新華書店や北京の外文書店などがあるが、政治宣伝的な書籍が目立つ場所に平積みされているだけで、書店文化は感じられない。同店がどんな書店になるかは見ものだが、家賃の高い場所に出店するのはやはり野心的な試みだ。

ミャンマーの最大都市、ヤンゴンの大型スーパーの2階にある書店を数年前から定点観測している。最近、気付いたのはミャンマー語の出版物が急激に増えていることだ。以前は輸入物の英語本が幅を利かせていたが、今は外国書籍の翻訳本、ミャンマーの作家・文化人・学者が書いた本が店の大半を占めるようになった。元々ヤンゴンは古本屋を見かける街だが、生活水準の向上とともに書店がより重要な役割を果たし始めている。

アマゾンなどのネット書店は本の検索や評価を知る上では便利で、ユーザー履歴から推薦もしてくるが、主張はない。リアル書店には思いがけない本との出合いや自分の趣味に合った商品を見つけられる機会もある。今後、アジアの消費が高度化する中で、リアル書店は重要な役割を果たすだろう。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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