アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 〝タピる〟若者が示すアジアのトレンドづくり

沖縄・那覇市に進出した台湾のタピオカ・ドリンク専門店

台湾、中国本土は当然として、ベトナム、タイ、韓国、そして日本でもタピオカ・ドリンクが大ブームになっている。日本ではタピオカ・ドリンクを飲むことを“タピる”と呼び始めている。タピオカ・ミルクティーの元祖、台湾の春水堂は2013年に日本に進出し、東京、横浜、大阪、さらに札幌、福岡、広島など地方都市にも展開。系列のテイクアウト専門店「TP Tea」は日本で250店に上る。春水堂、貢茶(ゴンチャ)などはアジア全域に急速に展開している。タピオカ・ドリンクがアジアで人気を集めるのはなぜか? 斬新な食感、スイーツ・ブームの進化など、さまざまな理由が考えられるが、隠れた理由はアジア域内の人の流動性の高まりだろう。春水堂は台中で創業し、台北など台湾各地に広がり、追いかけるように五十嵐(ウーシーラン)などテイクアウト・チェーンも急速に普及した。

台湾を旅行した若い日本人女性がタピオカにはまり、話題をつくったことで春水堂が日本に進出。日本に旅行に来たタイ、シンガポール、マレーシアなどの若い女性が話題にしたことで、もともと身近だったタピオカが再評価され、ドリンクとして広がった。最近はベトナムのハノイ、ホーチミンでも貢茶などのチェーン店に行列ができており、旅行に来た日本人、韓国人の若者が、そこでもタピオカを飲む。アジアのどこに行ってもタピオカに巡り合えることで、1カ所で起きたブームが他の場所でも起き、そこに出かけた人がブームを持ち帰るという“循環型ブーム”が広がっているように見える。

タピオカの特徴は、各国でなじみのある飲料に簡単に添加できることだ。ミルクティー、ウーロン茶から始まり、抹茶、オレンジジュースなどもタピオカ・ドリンクになった。最近は、チーズ入りタピオカ・ミルクティーも人気だ。各国でアレンジが利く柔軟性、汎用性がアジア全域に広がる大きな理由にもなった。考えれば、おすしも日本人の想像を超えた「変わりずし」が世界各国で編み出され、定着することで世界に広がり、今や12万軒以上のおすし屋さんが世界中で営業している。

タピオカは、高温多湿のアジアの共通の人気飲料として、定着するだろう。アジアのビジネスを考えるとき、各国で固有のアレンジができる点と旅行者がブームを循環させるという二つの要素は重要だ。商品の新鮮さが維持され、魅力が相乗的に高まっていくからだ。次の「タピオカ」は何か? それを見つけるには、まずはアジア各国に旅して、“タピって”みることだ。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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