わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の違反事例のほか、公益財団法人全国中小企業振興機関協会がこれまでに実施したセミナーにおける質問や、日々寄せられる問い合わせの中から、特に参考になる事例をQ&A形式で解説します。今回は、下請法上の義務についてご紹介します。
Q 顧客(ユーザー)の都合によりユーザーへの引渡代金の額が決まっていないため、下請代金の額についてはユーザーからの引渡代金の額が決まった後に決定することとしています。このため、発注書に下請代金の額を記載せず発注しています。下請法上、問題となりますか。
A 親事業者が発注する際、下請代金の額を定められない正当な理由がある場合を除き、下請代金の額を記載せずに発注した場合には、「書面の交付義務」(下請法第3条第1項)の規定に違反することとなります。下請事業者への下請代金の支払については、親事業者が責任を負うべきものであるため、ユーザーへの引渡代金の額が未定であることは正当な理由とはなりませんので、下請法上は問題となり得ます。
なお、下請代金の額を定めることができない正当な理由がある場合(例えば、修理してみないと費用が確定できない修理委託の場合など)において、正式な単価でないことを明示した上で、具体的な仮単価や「0円」の記載で発注することも可能ですが、その場合でも、当初の発注書面に下請代金の額が定められない理由およびそれを定めることとなる予定期日を記載するとともに、下請代金の額が確定した後は、直ちに正式な下請代金の額を記載した補充書面を交付する必要があります。
Q 下請事業者との間で下請代金の支払方法を記載した内容の取引基本契約書を締結していますが、下請法にて定められている親事業者が発注書面に記載すべき具体的な事項など、いわゆる委託内容などは口頭でお互いに合意しているので、発注書面を交付していません。下請法上、問題となりますか。
A 親事業者が発注に際して必要記載事項を記載した書面を直ちに下請事業者に交付しないことは、「書面の交付義務」(下請法第3条第1項)の規定に違反することとなります。例え親事業者と下請事業者の間で、委託内容などについて口頭で合意していたとしても、必要記載事項を記載した発注書面を交付する必要があります。
提供
公益財団法人 全国中小企業振興機関協会
(旧公益財団法人 全国中小企業取引振興協会)
下請取引適正化の推進を目的に、全国48カ所に設置された「下請かけこみ寺」を中小企業庁の委託により運営するなど、中小企業支援機関として各種事業を実施しています。
HP:http://www.zenkyo.or.jp
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