4月初旬以降、トランプ米大統領は、強引ともいえる関税政策を次々と打ち出している。それに伴い、世界の自由貿易体制に大きな変化が起きることが予想される。今後の展開にもよるが、世界の景気を大きく下押しすることも考えられる。株式や為替、債券などの金融市場は不安定な展開となり、わが国をはじめ世界の主要国は対応に苦慮している。
トランプ氏の関税政策には、米国の製造業を復活させることが念頭にある。関税率を引き上げて、他国の有力企業が米国への投資を増やすことを促し、その後で、関税率の引き下げや景気対策により、米国景気を活性化する狙いがあるようだ。それによって、同氏は来年秋の中間選挙での勝利を目指しているとの指摘もある。ただ、そのもくろみ通りに米国経済が展開するか否か、不透明要因もある。米国内の製造業を復活させるには相応の時間がかかる。また、高関税の影響で景気後退への懸念が高まっており、物価上昇の圧力も残っている。株式や為替などが不安定化している状況下、米国の庶民は経済的な苦痛にどれだけ耐えられるか、予断は許さないだろう。