船井総研の創業者、舩井幸雄氏のそばで仕事をすることにより、私は経営者の志というものを知ることができたと思っています。同社に入る前、実家の商売に身を投じていた時には、会社を大きくすることが経営者の目的だと信じて疑いませんでした。しかし、舩井氏はそうではありませんでした。一言で言うと「人の“幸せ”を考えている人」でした。入社後に舩井氏の著書全てを読み、そばで仕事をしているうちに、いつしか私も同じ考えを持つようになっていったのです。
時を経て、同社の社長になり、取材を受けて「あなたの志は?」と尋ねられた時、私は迷わず「まず社員を幸せにしたい」と答えるようになっていました。給料や休日をできるだけ増やして、社員に、心の中に“幸せ感”を持った人になってもらいたいと願いました。
志の二つ目は「会社の価値を高め、舩井氏を喜ばせたい」。三つ目は「クライアントを幸せにしたい」。私はコンサルタントとして手加減せずにクライアントと向き合うため、厳しいことを言う場合もありますが、それは結果を出したいがため、クライアントの幸せな笑顔を見たいからでした。
社長としてこの三つの志のために、どんな努力も惜しみませんでした。結果、数年すると、社員のエネルギーと、社を取り巻く環境は、就任前と違ったものになっていたのです。クライアントのために骨身を惜しまず生き生きと努力する社風は、新たなお客さまと良い社員を呼び込む風を巻き起こしました。
全ては“人”でした。一般的に業績を上げる要素は、価格や品質と考えられていますが、もしかしたら人という要素が大きいのかもしれません。
米国のコネチカット州やニューヨーク州などにあるスーパー「Stew Leonard’s(スチューレオナード)」は、スーパー業界のテーマパークと呼ばれていますが、その店に勉強のために行ったことがあります。素晴らしい点は多々あったのですが、私が最も驚いたことは、スーパーなのに店員に特定のお客さまが付いている、ということでした。今風に言うと「推し」がいるのです。お客さまのアンケートを見ると、例えば「私は25番のエイミーのレジに並ぶ。長い行列の日もあるけれど、エイミーとのささいな世間話が楽しみでこの店に来ている」と、お客さまは店員との接触に喜びを感じていたのです。
さまざまなものが便利になり、人を介さずに手に入る時代。だからこそ、人と関わる短い時間が良しあしの分かれ目になります。社員が幸せな笑顔をお客さまに向けられるよう、社員の幸せに心を寄せていこうではありませんか。

