日本商工会議所はこのほど、「2019年度全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」受賞事業を決定し、2月14日に石川県金沢市で開催された「全国商工会議所観光振興大会2020㏌金沢」において表彰した。大賞は、ひたちなか商工会議所(茨城県)の「ほしいも魅力発信プロジェクト」が受賞。特産物である「干し芋」を活用して、観光消費の拡大とシェア確保のために観光関連商品の開発やブランド化に取り組んだことなどが評価された(関連記事7面に)。優秀賞には、高山商工会議所(岐阜県)の「飛騨の匠」ブランド開発事業と、高槻商工会議所(大阪府)の体験交流型イベント「オープンたかつき」の2件が選ばれた。いずれも地域に根ざす商工会議所ならではの強みを生かした特色ある活動が評価された。特集では、受賞商工会議所の当該事業の概要を紹介する。
大賞
ひたちなか(茨城県)
ほしいも魅力発信プロジェクト
〇ひたちなか産の「干し芋」は、国内生産量シェア約9割を誇る地域資源。しかしながら近年原材料である芋の品種改良や機械化など農業技術の進歩により、全国的に干し芋の生産が拡大する中、シェアの低下に危機感を抱いていた。
〇ひたちなか市の観光は、「死ぬまでに行きたい! 世界の絶景100選」に選出(著名ブロガーによる)された国営ひたち海浜公園や、33万人超を動員した夏フェス「ROCK・IN・JAPAN」、常陸那珂港への大型クルーズ船の来航など、日本人旅行者のみならず外国人旅行者も多く、合わせて年間で392万人が訪れる。ひたちなか商工会議所では、これを好機と捉え、地域資源である「干し芋」を活用して、観光関連商品の開発やインバウンド誘客に取り組んできた。
〇同所は、農家ごとに異なる門外不出の製法や地域の風土を生かして製造され、他地域にはない「干し芋」の歴史をストーリー化するなど、ブランディングに取り組んだ。地域の文化的資料として発刊した書籍「ほしいも学校」は、後世に歴史を引き継ぐための重要なツールとなっている。
〇干し芋生産のシェア維持のみならず、販路拡大に向けた取り組みとして、同所と菓子組合との連携により企画開発した観光関連商品「干しいもパイ ほっしぃ~も」は、高速道路のサービスエリアで年間160万個を販売し、人気ナンバーワンの大ヒット商品となり、干し芋消費の拡大とブランド向上に貢献している。
〇干し芋の海外展開とインバウンド誘客に向けては、台湾への観光プロモーションの実施や同所の米国ロサンゼルス事務所を拠点としたPR活動および海外展示会への出展など、積極的に行い好評を博している。
〇同所が2015年度に実施した「世界ほしいも大会」では、わが国のほか、韓国、中国、タンザニアから約400人が参加。干し芋の名を世界に広めるとともに知名度向上の機会を創出した。
〇また、インバウンドの受け入れ整備として、地元高校生などによる通訳ボランティアの配置や自動両替機の設置、Wi-Fi環境の整備、キャッシュレス化、英語版のパンフレットおよびウェブサイトの充実など、外国人旅行者に快適な観光をしてもらえるよう取り組んでいる。今後、干し芋を地域ブランド化し、一層認知度を高めるとともに、干し芋をテーマとした観光拠点を整備していく方針としている。
優秀賞(2カ所)
高山(岐阜県)
「飛騨の匠」ブランド開発事業
〇飛騨高山は、森林王国・飛騨で培われた木材加工の技術を用いて奈良や京の都の造営に携わった技術者「飛騨の匠」の技と精神が受け継がれてきた地域である。
〇高山商工会議所はこれまで、まちづくりや観光振興に十分活用されてこなかった地域の人的資源である「飛騨の匠」を生かすべく、技術者と観光関連事業者などに広く呼び掛け、ブランド開発事業に着手。市内に点在する「飛騨の匠」関連資源を活用し、市中心部に集中する観光客の周辺部への分散化や飛騨高山の新たな観光の魅力創出を図った。
〇同所は「飛騨の匠」を軸とした観光振興事業を展開。「飛騨高山」町並博覧祭事業では、重伝建地区の町並みや町家に伝統的工芸品などを展示し、伝統産業の家具の曲木技術の体験や特産品マーケット・カフェを実施。「飛騨の匠」ゆかりの製品・商品を結び付け、外国人を含めた観光客にアピールするとともに観光消費拡大につなげた。
〇「飛騨の匠」街道観光事業では、「飛騨の匠」が歩いた道を活用してウォーキングツアーを造成。「飛騨の匠」ゆかりのまち歩きを組み合わせた旅行商品を販売し、特に健康と歴史に関心が高い女性客から好評を得た。
〇高山市中心部は、多客期にはオーバーツーリズムの状態が見受けられるという課題を抱えている。その課題解決に向けて市内に広く点在する「飛騨の匠」関連の資源を活用し、体験コンテンツの開発・提供などにより観光客の分散を促すことで、中心部以外への誘客とオーバーツーリズム解消に大きく貢献している。
〇年間50万人超の外国人観光客に「飛騨の匠」関連資源の魅力を訴求するため、地域限定案内通訳士やゲストハウスの経営者などを対象に「飛騨の匠」に関する外国語ガイド研修会を実施し、インバウンドの満足度向上に寄与した。
高槻(大阪府)
体験交流型観光イベント「オープンたかつき」
〇高槻市は、大阪駅と京都駅からそれぞれ鉄道で15分以内の好立地にあり、また、南北に細長く伸びる地勢から、田園風景、商店街、工業地帯、里地里山など地域ごとにさまざまな表情を見せている。
〇高槻商工会議所では、市や観光協会との連携強化を図り、こうした高槻の魅力をただ「見る」のではなく、体験し、地元の人と交流することでまちの良さを発見してもらう、新しい観光スタイルを「体験交流型観光・オープンたかつき」と名付けて推進している。
〇2016年、同所と高槻市、観光協会の3者による「オープンたかつき」運営協議会を立ち上げた。季節ごとにさまざまな地域資源を活用し、年間100本を超える観光プログラムを実施する。
〇大企業と中小企業が連携した工場見学、JRの車庫や高速道路工事現場の見学、「古墳や渓谷でのヨガ体験とランチ」「相撲の朝稽古見学とちゃんこ」といった体験とグルメを組み合わせたツアーなど、多種多様なジャンルの資源をフル活用したメニューにより、プログラム全体の定員9918人に対し、約9割に相当する8902人が参加。参加者の90%近くから高評価を得た。
〇また、神戸市や西宮市などの観光PRサイトとの相互バナーリンクや、奈良県明日香村との連携による「藤原鎌足の足跡をたどるツアー」、大阪府島本町での「サントリー山崎蒸留所へのテイスティングツアー」など、周辺エリアとの協働による広域観光ツアーも実施している。
〇「オープンたかつき」のスタート以来、観光協会ホームページのビュー数は、実施前の5倍に達し、また、購入意欲に関するアンケートでは、市内観光の際に「何か購入した」「購入する予定」と回答した割合が、16年度の58%から18年度は83%と飛躍的に伸びた。地域の認知度向上と購買意欲の高まりを受けて観光消費の増加にも大きく貢献している。
きらり特別賞(伝統芸能再興)
弘前(青森県)
The津軽三味
〇弘前市は、行政および弘前商工会議所、観光コンベンション協会、物産協会と連携して「弘前さくらまつり」「弘前ねぷたまつり」「弘前城菊と紅葉まつり」「弘前城雪灯籠まつり」を、弘前四大まつりとして開催し、広域からの誘客を図っている。
〇弘前商工会議所は、新たな魅力を創出することを目指して、2005年から全国的にも知名度の高い津軽三味線を主軸に地域の伝統芸能を集結した事業を展開し、観光振興に取り組んでいる。また、同所では、津軽の伝統芸能である津軽三味線に焦点を当て、奏者300人による大迫力の合奏と津軽民謡、手踊りなど地域の伝統芸能を結集した「The津軽三味線」のステージを展開、2回の公演で1600人を集客した。集客による経済効果は、関連する宿泊・飲食・土産など多岐にわたり、観光消費に大きく貢献した。
〇ステージでは、普段目にすることのできない津軽の伝統芸能が一堂に集まるほか、津軽三味線と現代楽器との音楽セッションや地域芸能と弘前ねぷたとのコラボレーションを実施するなど、新たな魅力を発信し続け、年齢や性別を問わず、日本人・外国人旅行者のいずれからも好評を得た。
〇16年度にはJR東日本の「青函デスティネーションキャンペーン」のメイン事業として開催され、津軽三味線事業の知名度向上につなげている。
〇「津軽三味線の本場、弘前」の地位確立のため、関連ツアーの企画や観光関連グッズの販売、津軽三味線ライブハウスの増設、演奏体験の実施、本場での演奏希望者の誘客、伝統文化の育成など、多角的に事業を拡大し続け、通年で楽しめる仕組みづくりや地域観光の魅力増大に取り組んでいる。
きらり特別賞(地域文化創造)
福山(広島県)
福山をワインの街に!
〇福山商工会議所は、2015年に地域資源であるバラとブドウを活用し産学官民連携で「ばらの酵母菌で瀬戸内・福山の六次産業を醸すプロジェクト委員会」を立ち上げ、さらに、これまでのプロジェクトを継承し、18年に「備後福山ワイン振興協議会」を設立した。“福山をワインの街に!”を合言葉に、ワインを用いた地域振興に取り組んでいる。
〇福山市は15年に構造改革特別区域として、「ふくやまワイン特区」が認可され、16年には備後圏域6市1町の申請による「備後ワイン・リキュール特区」の認可により、ワインによる観光振興が始まった。
〇同所は、16年の福山ばら祭への福山ワインのブース出店を経て、さらに事業を拡大。ワインフェスの開催や地元鉄道の井原鉄道の列車を貸し切ったワイン列車を運行(定員36人に対し78人が参加)するなど、観光の魅力増大とワインの製造販売などの増加により観光関連の消費が伸長した。
〇18年からは福山ワインのブランド化を図るために「備後ワインクラブ」を開催。ブドウの収穫から始まる醸造体験やワインを学ぶ「ワイン塾」の開催などを通じて、福山ワインの認知度向上や消費拡大に寄与した。
〇食による観光振興事業として、ワインとワインに合う料理を掲載した「福山ワインを飲める店MAP」を作成し、観光客から好評を得ている。
〇製造したワインの販売数は18年に2万1300本に達するなど、地元を代表する観光土産品の一つとしての地位を固めるとともに、商談会をきっかけに海外バイヤーからも引き合いがあり、販路を広げている。今後、MICE活動として、24年に福山で開催される「世界バラ会議」で当地のワインをふるまい、さらなる認知度向上を狙う。
きらり特別賞(伝統文化)
柳川(福岡県)
柳川雛祭り「さげもんめぐり」関連事業
〇地域の工芸品「さげもん」は、女の子の初節句にひな壇の周りに吊り下げて華やかさを演出する飾り物である。柳川商工会議所などが20年前に、これを観光に活用すべく観光施設や店舗に装飾したさげもんを見て回る「さげもんめぐり」を開始、現在は期間中に12・7万人ほどを集客している。
〇同所や行政、観光協会などで構成する柳川雛祭り実行委員会では、伝統工芸である「さげもん」の継承と地域産業の発展を目的に、「おひな様始祭」「おひな様水上パレード」などの事業に取り組んでいる。
〇さげもんめぐりの期間中は「おひな様始祭」「おひな様水上パレード」「柳川きもの日和」など、多くのイベントを開催し、地域の誘客と魅力向上に大きく貢献している。また、同所は事業者と協力して、さげもんに関連する観光土産品の開発や体験型プログラムなどの提供をしており、観光消費の拡大に一年を通じて寄与している。
〇昔ながらの風情が残る小路を活用した「恵美須ひな小路事業」は、民家の軒先や寺院、古蔵などを、さげもんなどで装飾し、ひな祭りの雰囲気が感じられる空間を創出しており2週間で1000人が訪れるなどの集客効果がある。
〇同所は主催事業として、柳川観光の定番である川下りのどんこ船にさげもんを装飾した「さげもん舟」の試験運行に取り組み、地域資源の磨き上げと魅力向上に積極的に取り組んでいる。
〇同所とフィルムコミッションが連携して誕生した地域アイドル「さげもんガールズ」の観光PRビデオは、視聴回数が1000万回を超え、大きなプロモーションの効果が期待されている。第2弾の撮影は、同地域がターゲットに定める台湾で撮影を行いさらなるインバウンドの拡大を図っていく。
奨励賞(5カ所)
伊那(長野県)
南アルプス観光魅力創出プロジェクト 天空のキャンプ場と伊那まち周遊観光
〇伊那市のにぎわいをけん引してきた中心市街地商店街は、高齢化や後継者不足から空き店舗が目立つなど衰退が加速していた。また、同市は、南アルプスや高遠(たかとお)の桜といった観光資源を保有するものの、目的地のみの観光であり観光消費がまちなかまで波及することが少なかった。
〇伊那商工会議所は、近年宿泊者が増加する標高約1800㍍の鹿嶺(かれい)高原キャンプ場「天空のキャンプ場」を核として、キャンプ場と中心市街地を結ぶ新たな観光コースを創出し、地域の魅力向上や観光消費額の増加につなげるための事業に取り組んでいる。
〇同所は観光消費につなげるため天空のキャンプ場とそば打ち体験や酒蔵見学などをマッチングさせた体験型観光ルートを開発。2019年度には、観光コース「朝マルシェ×伊那まち×鹿嶺高原周遊ツアー」を創設し、提供したところ、市内の回遊性が高まり、観光消費額も増加した。
〇また、観光コースと観光資源の魅力が伝わるチラシやPR動画などを作成・活用し、鹿嶺高原キャンプ場と商店街の双方で情報を発信し、目的外の来訪者の誘導に寄与している。
〇2018年に実施した天空のキャンプ場と中心市街地商店街での体験型観光コースを結ぶモニターツアーでは同所の呼び掛けにより、商店街での体験コースにおいては、商店街が主体となってコースを策定。ツアー参加者の満足度の高さから自信が深まり、新たなツアーの策定に積極的に取り組んでいる。
〇天空のキャンプ場では、伊那市内の地酒や食材を持ち寄る一夜限りのBarイベントを開催。キャンプ場の宿泊者をはじめ行政、観光事業者、地元商店主など多くの関係者が参加し、鹿嶺高原の魅力発信の機会を創出した。
鹿沼(栃木県)
鹿沼自転車応援団事業、鹿沼サラダそば事業、ものづくりのまち鹿沼ブランディング事業
〇鹿沼市は東京から100㌔㍍圏に位置し、市内には高速道路のインターチェンジと私鉄やJRの駅があり、交通は充実しており、また恵まれた自然環境も有しているものの、観光客の入り込みは少ない状況が続いていた。
〇そうした中、鹿沼商工会議所は2015年から自転車を核としたサイクルツーリズム事業を展開。起伏に富んだ鹿沼の地形を生かしたアップダウンのコースは自転車愛好家などを呼び込み、サイクリングに「食」や産業観光などの地域資源を組み合わせて、通年での観光客誘致に取り組んでいる。
〇同所はサイクリストの視点に立ち、市内120店舗にサイクルスタンドの設置や回遊性向上のためのコースマップの作成、109カ所にオリジナル距離プレートを配置するなどサイクリストの受け入れ整備を行った。
〇本事業をきっかけにスタートした関東一円の神社10カ所を巡る「ツール・ド・御朱印」は、1000冊の御朱印帳が完売し増刷するなど好評を得ており、広域からの誘客につながり、サイクリストがSNSによる観光情報の発信を行うなど、地域の観光振興に寄与している。
〇また、観光客が安全に安心してサイクリングを楽しめるよう、行政とも力を合わせ注意喚起の看板設置や自動車専用道路の整備を進めている。
〇当所が開発した「サラダそば」は、鹿沼市内で栽培した玄(げん)そばと地元産の野菜、ドレッシングを使用。市内14店舗で提供され、サイクリストや女性客に好評だ。客単価も高いことから、各店舗の観光への意識も高まっている。
〇同所会員企業によるレンタサイクルや電動アシストスポーツバイクでの里山ツアーは、同所が実施している産業観光「かぬまオープンファクトリー」と連携。サイクリングと産業を組み合わせることで魅力向上や滞在時間の延長につながっている。
横須賀(神奈川県)
英語版YOKOSUKA 1chiban(ヨコスカイチバン)
〇横須賀市は、米海軍横須賀基地のみならず、国内外の企業の研究所が集積した横須賀リサーチパークなどがあり、外国人が多く在住する環境にある。
〇横須賀商工会議所が2003年度から取り組んでいる英語版「YOKOSUKA ichiban」事業は、市内在住の外国人や横須賀を訪れる外国人旅行者に市内の店舗情報やイベント情報などを提供し、地域経済の活性化につなげている。
〇事業者向けのサービスとして、ウェブサイトやガイドブックなどへの店舗情報の掲載、メニューなどの翻訳、そのほか外国人の受け入れに必要な支援を適宜提供している。
〇同所では、米海軍横須賀基地を重要なプロモーション先と捉え、月に1~2度訪問し、冊子の配布やニーズ調査を行っている。同基地のみで2万人の外国人居住者を有する優位性を生かし、その家族や友人を訪ねて来訪する外国人旅行者への観光情報や店舗情報などを提供することにより、消費額増加につなげる仕組みづくりと地域の魅力発信に貢献している。
〇外国人によるモニターツアーを実施し、英語のチェックや購買意欲を高めるためのPOP(平置きの店頭広告など)作成のポイントなどを直接伝授するサービスを行うなど、外国人の視点を重視した受入環境整備を行っている。
〇16年のウェブサイトの月間アクティブユーザーは200人であったが、直近では600人と3倍になり、Facebookへの登録は、14年の100から直近で760と大幅に増加している。また、ウェブサイトは年間約2万2000ページビューの閲覧があり、地域情報の拡散が実現している。
〇店舗側からは、英語版「YOKOSUKA 1chiban」に登録したことで、外国人の来店客が増加したという声が聞かれ、集客効果が確実に現われている。
富士(静岡県)
富士山駿河湾観光ポータルサイト「NEXT FUJI」
〇富士市では、観光誘客のため民間事業者や市民ボランティアが「富士つけナポリタン」「工場夜景」「田子の浦しらす」「岳南電車」など、観光資源の掘り起こしや磨き上げを活発に行っている。
〇富士商工会議所では、そうした市の動きを後押しするため、着地型観光を意識したオリジナル観光ポータルサイト「NEXT FUJI」を開設。同サイトでは、観光資源の空撮動画やイベント情報などを8カ国語で発信し、国内外の観光客に向け、富士市を訪れる動機付けを行っている。
〇また、同サイトでは、市民にアンケートを実施して富士市の観光資源をピックアップ。選ばれた観光資源をドローンから空撮し、これまで見たことのない映像を配信している。その映像は、市内の企業・団体・関係機関などにも無償提供し地域全体で魅力発信に使われているほか、NHKや民放キー局による利用などもあり、富士市の魅力拡散に大きな成果を上げている。
〇同サイトの開設に伴い、地域ならではのストーリーを訴求し、「ローカル電車×ご当地グルメ」など地域資源を掛け合わせたツアー、御朱印巡りや工場夜景撮影などの地域資源掘り起しツアーを企画・実施。一部のツアーでは定員30人に対し300人を超える申し込みがあるなど好評を博している。
〇観光資源の発掘や地域の魅力発信を目的に、インスタグラムで行うフォトコンテスト#キャンペーンを実施。審査員には、地元紙の新聞記者や地元公立高校の新聞部・カメラ部の高校生が加わり、賞品のスポンサーの地元飲食店や洋菓子店などから協賛を受けるなど着地型を意識している。
〇フォトコンテストは、目標投稿数1000件に対し、1500件もの投稿があり、中には外国人による投稿もあり、世界への観光情報発信に寄与している。
大垣(岐阜県)
養老鉄道を活用した魅力発見事業
〇養老鉄道は、年間600万人が利用する地域交通機関。通勤・通学のほか大垣市内の観光施設や中心市街地への集客など、同市の活性化に不可欠な存在だが、年々乗降客数の減少が止まらず廃線の危機が迫っていた。
〇大垣商工会議所ではその存続に向けて観光協会など4団体で、市に対し要望活動を行ったほか、養老鉄道を観光資源として活用すべく、利用客のターゲット選定や観光商品化に向けた調査研究、モニターツアーを実施。養老鉄道を活用して西濃地域などの魅力を発信するツアーの商品化に力を注いでいる。
〇モニターツアーとして、親子層をターゲットとしたハロウィン列車では、3便で510人の家族連れが参加し、同鉄道の集客に大きく貢献したほか、野外に比べて保護者の負担が少ない新たな子どもの遊び場を創出、地域の魅力向上に貢献した。
〇また、養老鉄道は自転車の乗り入れができるという他の鉄道にはない特徴と沿線にサイクリングコースが多いという特性を生かしたサイクルトレインで、サイクルツアーを実施。コース内に六つのチェックポイントを設けたスタンプラリーを行うとともに、観光スポットの回遊や地域の特産品およびグルメを堪能する機会を提供し、消費機会の創出につなげた。
〇養老鉄道沿線の2市9町の商工会議所・商工会などの関係機関は連携し「交流産業戦略推進会議」を組織。観光振興に関して広域で議論を展開している。
〇大垣地域は近年、外国人観光客の宿泊地としての利用が増え、養老鉄道でも車両内や駅構内の案内看板、地図、観光パンフレットなどの多言語表示を行ない利便性の向上を図っている。また、同所をはじめ行政や観光協会、商店街などは、地域全体で外国人観光客が快適に滞在できる環境づくりに寄与している。
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