1924年に和菓子店として創業した小竹製菓。のちにパン部門を設立し、上越のソウルフードとなった名物「サンドパン」の味を守り続けてきた。そんな同社が15年ほど前に、新たな味の創出を目指して開発した「笹だんごパン」が、北陸新幹線開業を機に大ブレーク。味もさることながら、パッケージのかわいらしさも消費者のハートをつかんだようだ。
新商品開発のきっかけは婚礼菓子の需要減
「笹団子」は、新潟県を代表する和菓子である。餡(あん)を包んだヨモギ団子を、笹の葉数枚でくるみ、紐(ひも)で両端を絞ってから蒸したりゆでたりしてつくる。戦国時代の携行保存食として誕生したとされ、昭和30年代ごろまでは端午の節句の供物として、各家庭でつくられていたという郷土料理の一つだ。
そんな笹団子をパン生地で包み、ふっくらと焼き上げたのが「笹だんごパン」だ。パン生地には新潟県産コシヒカリの米粉をブレンドし、薄皮にすることでひと口目から笹団子と一緒に食べられるように工夫されている。さらに、笹からイメージしたパッケージデザインのかわいらしさも相まって、北陸新幹線開業時に若い女性の注目を集め、SNSによる口コミが広がって知名度が上昇する。今では1日平均300~500個が売れるヒット商品となっている。
製造元は、まもなく創業100年を迎える小竹製菓だ。和菓子店としてスタートし、当初は家庭で日常的に食べられていた「たまごパン」などをつくっていた。その後、戦後復興の中でパンや洋菓子づくりも開始し、サンドパンをメインに製造するようになった。
「うちの店は和菓子、洋菓子、パンなど幅広く扱っていることから、ウエディングケーキや引き出物の需要も多く、売り上げの大きな割合を占めていました。ところが時代とともに結婚式のスタイルが変わり、15年前あたりから受注が減少の一途をたどりました。そこで主力を婚礼菓子からパンにシフトし、サンドパンとともに看板となるような新商品づくりに乗り出したんです」と、同社社長の小竹孝雄さんは振り返る。
スタッフ同士が新商品のアイデアを出し合う中、持ち上がったのが笹だんごパンだった。
「笹団子もつくっているパン屋」の強みを生かしたが……
発案したのは、笹団子専任スタッフだ。「笹団子もパンもどちらもおいしいから、二つを一緒にしてみたらどうか」というもので、小竹さんは「それは斬新で、おもしろい」と思い、笹団子もつくっているパン屋の強みを生かして、試作してみることにした。
笹団子は完成品のため、それを包むパン生地の配合に苦労したが、2~3カ月後には納得いくものが完成した。早速店舗やサービスエリアのほか、イベント会場などで販売したところ、意に反してまったく売れなかったという。
「知り合いからずいぶん笑われました。笹団子だけでおいしいのに、あえてパンで包む必要があるのかと。でも味には自信があったし、うちにしかつくれない商品という自負もあったので、売れ行きに関係なくつくり続けました」
転機が訪れたのは、2015年の北陸新幹線開業だ。市がその2年前から上越妙高駅での販売を見据えて、地元の特産品の開発に乗り出したのだ。小竹さんもそこに着目し、市の相談会や商工会議所の商品開発セミナーなどに毎回出席し、笹だんごパンの改善点を聞いて回った。その結果、「パン生地が厚くて、なかなか笹団子までたどり着けない」という問題点に行き着いた。
「盲点でした。早速パン生地を薄くすると同時に、地元の特産品を意識して生地に新潟県産こしひかりの米粉を配合し、もちもちとした食感が楽しめるようにリニューアルしました。大きさは従来品の半分くらいになりましたが、笹団子とパンのおいしさを同時に味わえる商品になりました」
女性客を念頭にパッケージにとことんこだわる
土産品として販売することを想定し、パッケージづくりでは三つのコンセプトを立てた。一つは女性に喜ばれること、二つ目は子どもやその祖父母に喜ばれること、そして第三には手に取ってもらえることだ。それらを満たすには“親しみやすさ”がポイントと考え、笹のイメージからパンダをキャラクターに起用し、パッケージの大部分を透明にして中身が見えるようにした。さらに裏側にはパンダの後ろ姿をプリントし、中心に継ぎ目が来ないように上下左右をパウチする方法をとった。
営業のかいあって新幹線駅の土産物に採用されると、狙いは的中した。多くの女性客が「かわいい!」と手に取り、購入して次々とSNSに投稿してくれたのだ。
「パッケージデザインだけでなく、袋を小振りにして商品がふっくらと見えるところもSNS向きでした。ただ小振りな分、機械による袋詰めができず、すべて手作業で行っていますが、そうした努力も無駄にはなりませんでした」
SNSで口コミが拡散し、女性向け雑誌などにも取り上げられたおかげで、ピーク時には1日2000個も売れる大人気商品となった。その後も引き合いが続いたが、手づくり商品で増産が難しいため、無理のない生産体制を整え、現在1日300~500個の売れ行きを維持している。
「時代のニーズに合わせて、生地のつなぎをマーガリンから米油に変えるなどの改良を重ねてきました。この商品のおかげで店の知名度が上がり、今では県外からも買いに来てくれるお客さまが増えました。今後も二枚看板を大切にしながら、新しいものに挑戦したいですね」と職人魂をのぞかせた。
会社データ
社名:株式会社小竹製菓(こたけせいか)
所在地:新潟県上越市南高田町3-1
電話:025-524-7805
代表者:小竹孝雄 代表取締役
設立:1953年
従業員:15人
※月刊石垣2020年2月号に掲載された記事です
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