先日、飲食業界のコンサルタントをしている知人から飲食業界の動向をレクチャーいただく機会があり、時代の変化を痛感させられました。誰もが知っている都市部への人口集中。その影響で大手飲食チェーンの出店戦略が変わってきたとのことです。
これまでは都市部で繁盛するモデルができれば、そのまま全国に展開し、大型チェーンとして成功モデルになるケースがたくさんありました。ところが地方では人口が減少、さらに子供が少ない、高齢化の進むまちが増加。都市部と地方の生活環境の違いが大きくなってしまったことで、成功モデルが生まれにくくなってきたようです。
例えば、都内の湾岸地区では子供が増えて、学校の教室が足りないくらいです。なので、ファミリータイプの飲食店が大繁盛しています。あるいは、20代の若者がたくさん住むまちでは、「お一人様焼肉店」が大人気です。
そんな都心部で成功した外食業態なら、地方でも出店したいと考えたいもの。恐らく、以前なら行っていたでしょう。ところが、それをせずに都市部限定で出店していく戦略を選ぶケースが増えてきたようです。明らかに都心部と地方で飲食店の活用に違いが出てきたので、同じモデルの展開が難しくなってきたのではないでしょうか。
一方で地方には、新たに出店して、繁盛している飲食店もあります。都心部以上に厳しい環境で、人が集まる飲食店をつくるのは大変です。食材にこだわり、地元プラス遠方からも食べに行きたくなるくらいの魅力を備えた業態が、幾つも登場しています。
例えば、「食堂かめっち。」は、岡山県の山間にあるアクセスが良好ではない立地の店です。ところが、生みたての卵とお米にこだわる卵かけごはんのメニューだけで、何時間も待たなければ食べられない大繁盛店となっています。同じように地産の野菜や豚でつくった豚汁専門店や海産丼など、人口は減少しているまちでも繁盛しているこだわりの飲食店があります。 厳しい環境で知恵を絞った業態が地方から都心部に出店し、大人気の繁盛店になっている成功パターンも出てきました。つまり、地方での成功が全国展開につながる逆パターンが生まれるかもしれない時代になったのかもしれません。なので、各地でポツンと繁盛している飲食店を探して、全国で展開できないかと考えている企業も増えています。こうした、動向の変化を踏まえて、周囲で何気なく繁盛している飲食店にビジネスの可能性を探ってみてはいかがでしょうか?
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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