日本商工会議所は6日、「新型コロナウイルス感染症対策における中小企業支援に関する緊急提言」を取りまとめ、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部長の安倍晋三首相らに提出した。同提言では、中小企業の事業継続を支援するため、特別貸付制度の創設などの資金繰り支援、新型コロナウイルス感染症による影響を受けながらも売り上げ向上に取り組む中小企業の設備投資に対する支援などを要望している。また、経済活動の過度な委縮による経営へのダメージを回避するため、検査体制の増強による国民の不安解消を含め、感染拡大防止・早期収束に向けた果断な対応、過度な不安をあおらないよう専門的・科学的見地に基づいた情報発信の徹底を求めている。(提言全文はこちら:https://ab.jcci.or.jp/article/14393/)
同提言は当面の対応策として、①感染拡大防止・早期収束に向けた果断な対応、②専門的・科学的根拠に基づいた情報発信の徹底、③資金繰り支援(セーフティーネット機能の強化)、④事業環境の整備、⑤雇用・労働対策の5点を柱としている。各種対策や支援を通して、国民の不安の解消や中小企業の事業継続を後押しするよう求めている。
全国の商工会議所にも多くの相談が寄せられている資金繰り支援については、特別貸付制度(別枠、低利、長期、据え置き期間延長)や小規模事業者経営改善資金融資(マル経融資)の特別制度(別枠、低利)の創設を要望。また、政府系金融機関および民間金融機関、信用保証協会などに対する、積極的な新規融資や返済猶予などの既往債務の条件変更、条件変更先への資金繰り支援などの周知徹底を提言している。
さらに、新型コロナウイルス感染症が地域経済に与える影響は計り知れないことから、感染状況などを見極めつつ、日本経済の基盤である中小企業・小規模事業者が勇気を持って事業継続できるよう、引き続き、必要に応じて躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な対策を実行するとともに、事態の収束後、国内外の観光振興策の強化をはじめ、直ちに実行すべき需要喚起策などの大胆な経済対策を今から検討・準備するよう主張している。
全国の商工会議所は1月29日から、「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」を設置し、新型コロナウイルス感染症による経営への影響を受けた中小企業・小規模事業者の相談に迅速に対応している。商工会議所への相談件数は、2月下旬から急増し、1千件を超えている。
寄せられた相談内容を見ると、初期は、「インバウンドの減少」や「サプライチェーンの停滞」に起因する「宿泊・ツアーのキャンセル」「海外製部品・資材が届かず生産・工事停止」など観光関連産業や製造業・建設業からの相談が目立っていた。その後、感染の拡大により、「日本人観光客の減少」に起因する相談が増え、近時は、「イベント中止」や「学校一斉休校」に起因する「相次ぐ予約キャンセルで大幅な売り上げ減少」「従業員の休業で業務に支障」「学校給食の休止による大幅減収」などにより、飲食業・サービス業・卸売業・小売業など全国のあらゆる業種・業態の中小企業・小規模事業者から悲鳴が寄せられ、地域経済への影響も深刻化している。
また、日商が2月中旬に実施した調査では、6割を超える中小企業・小規模事業者が、「製品・サービスの受注・売り上げ減少、客数減少」など新型コロナウイルス感染症により経営に影響(懸念を含む)が生じていると回答している。しかし、調査実施以降のさまざまな事態に鑑みて、経営に与える影響はさらに拡大していると推察されることから、これまでにも各種機会を捉えて中小企業・小規模事業者の声を政府に伝えてきたが、今回改めて本緊急提言を取りまとめた。
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