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第129回通常会員総会 三村会頭あいさつ

あいさつする三村会頭

本日は、日本商工会議所第129回通常会員総会を、安倍内閣総理大臣、磯﨑経済産業副大臣、また、全国各地の商工会議所から、多数の皆さまにご出席いただき、盛大に開催することができ、誠にありがとうございます。

わが国経済は、2018年の10~12月期GDPの2次速報値では、年率換算で実質プラス1・9%になりました。個人消費の動きには依然、力強さを欠くものの、民間企業の設備投資は底堅く、内需は比較的堅調であるといえます。

他方、足元では、外需の落ち込みにより輸出が伸び悩みを見せていることが気掛かりであります。世界経済は、IMFによれば、2019年に3・5%と引き続き高い水準を見込んでいますが、昨年10月時点の予測から0・2%の下方修正となっており、緩やかではありますが減速感が指摘されています。

こうした状況の背景には、世界経済全体の先行きに対する不透明感があります。米中貿易摩擦は、追加関税引き上げがいったんは見送られたものの、両国の覇権争いの側面もあって長期化は避けられず、また英国のEU離脱の行方も混沌(こんとん)としています。保護主義の広がりは、これまでグローバリズムの恩恵を最大限に享受してきた日本にとっては、極めて憂慮すべき事態であるといえます。

このように、世界経済の先行きは、決して楽観できる状況にはありませんが、各国で起きている政治リスクの高まりは、われわれが自らコントロールできない事象であります。その間にも、経済、社会を巡る構造変化は着実に進んでおり、それに対応できない企業、組織は淘汰(とうた)されていくことになりかねません。海外経済に減速の兆しが見える中で、われわれが取り組むべきは、日本の成長する力を育て、自らの企業の成長力を強化していくことであると考えます。

人手不足と経営の持続性確保

わが国経済の最大の課題は、人手不足とそれに伴う経営の持続性確保であります。女性・高齢者・外国人といった多様な人材の活用や、働き方改革などに取り組んでいかなければなりません。

特に、外国人に関しては、われわれの要望活動が実り、この4月から、一定の専門性や技能を有する外国人材の受け入れ拡大が実現します。その際、中小企業における円滑な受け入れとともに、政府、地方自治体、受け入れ企業それぞれが果たすべき役割をしっかり担うことで、外国人材が地域社会において共生し、わが国経済・社会基盤の維持・発展に寄与する仕組みにしていくことが重要であります。日本商工会議所では、説明会やセミナーを通じた制度周知を図るとともに、受け入れ業種や支援機関の在り方などについて、引き続き意見具申してまいります。

他方、今般の受け入れ拡大による外国人材は最大で34・5万人とわが国の就業者の0・5%にとどまり、人手不足は一層の深刻化が予想されます。人材確保のために、中小企業は防衛的な賃上げを余儀なくされていますが、中小企業の労働分配率は75%程度であり、限られた収益の多くを人件費に充当しているのが実態であります。収益力の拡大を図り、付加価値を増大させない限り、経営の持続性は確保できません。

それではこうした事態に対して、われわれはどう対処していくべきでしょうか。

解決策の一つは生産性の向上であり、その切り札はITの活用であります。ここ数年、ものづくり分野を中心に、中小企業においても、「身の丈IoT」による業務改善や、熟練技能などをIT・IoT、ロボット、AIなどに代替する取り組みが見られるようになってきました。しかしながら、いまだ地域の中小企業に広く浸透しているとはいえず、ITなどの導入・活用は、いわば「発火点」に至っていない状況にあります。

このため、日本商工会議所では、引き続き、外部機関と連携したセミナーの開催などを通じ、中小企業のITなどの活用拡大を推進してまいります。

解決策の第二として、私は、大企業と中小企業の収益格差に注目しています。

アベノミクスがスタートする前(2012年12月)の売上高経常利益率は、大企業4・7%、中小企業3・1%に対し、直近の状況(2018年10~12月期)では、大企業8・4%、中小企業4・0%となっています。アベノミクスの成果で、中小企業においても収益力が向上しているものの、その幅は大企業に比べて小さく、両者の収益力の格差はむしろ拡大しています。

この要因はいくつか考えられますが、私は、その最大のものとして、取引価格の問題があると考えています。

かつて超円高に見舞われた時代に、大企業は、自分たちが生き残るために取引先の中小企業、素材メーカーなどに調達価格の引き下げを要求し、関係企業もそれに応じました。その後、超円高は是正されて円安になり、大企業は輸出をはじめとする海外取引などにより収益力を回復させました。他方、中小企業においては、円安による輸入物価の上昇により、コストアップに直面しました。日本商工会議所の調査では、約8割の中小企業において、電気料金や原材料費用、賃金などの上昇分を価格転嫁できていないという結果が出ています。

このことは、円高と円安の時代をトータルで見た場合、中小企業から大企業に大幅な所得移転が行われたことを示しているのではないでしょうか。もちろん、まずは中小企業自らが、あらゆる努力によって付加価値を向上していかなければなりません。しかし、これからの大企業と中小企業は、サプライチェーン全体の中で、例えばさまざまなコストアップをおのおのが適切に負担する、あるいは、IT化など中小企業の生産性向上に大企業が協力する、といった関係になっていくことが望ましいと考えています。

日本商工会議所の第13代会頭を務めた永野重雄氏は、わが国においては、大企業と中小企業が相互に補い合って強固な経済を形づくっており、それはあたかも、大小さまざまな石が固く組み合った城の石垣のようであるとして、「日本経済石垣論」を唱えました。この考え方は、現代社会においても通用するものであると考えます。大企業と中小企業が協力しあって共存共栄を図っていくことが、わが国経済をより強固にしていくことになるわけで、私は、時代に合わせた新しい石垣の在り方が求められていると考えます。

人口減少と地方の疲弊

「人口減少」と「地方の疲弊」も、わが国が抱える構造的課題であります。

地方創生を実現するための5カ年計画である「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、策定から4年が経過し、第1期の最終年を迎えています。総合戦略の推進で、地方創生に顕著な成果を上げつつある事例が着実に増えています。

他方、地方から東京への人口流出の動きは依然止まらず、また一部の地域では県庁所在都市に人口が集中しつつあり、東京一極集中・地方都市の衰退という構造問題はさらに深刻化しているのが現状であります。

現在、政府は2020年からの5年間を見据えた次期総合戦略策定に向けた準備を始めています。日本商工会議所では、第1期の戦略の徹底した検証・評価の実施を政府に促すとともに、次期戦略がより実効性の高いものとなるよう意見書を取りまとめ、国に働き掛けてまいります。

各地商工会議所におかれても、これまでに各自治体が策定・実施してきた地方版総合戦略について、その進捗(しんちょく)状況や成果の検証に積極的に参画し、地域の実情が十分反映されるよう大胆な見直しを提言するなど、真の地方創生実現に尽力いただきたいと思います。

また、これまでも申し上げてまいりましたが、地域経済に活力を取り戻す切り札は地域資源の活用と観光振興です。農商工連携による地域特産品の開発、広域連携などを軸とした観光振興への取り組みや、順調に増加を続けるインバウンド拡大の推進などにより、域外需要の取り込みを積極的に進めることが重要であります。

そのために、ビッグデータなどを活用して地域の産業の強みと弱みを客観的に把握し、それを地方創生やまちづくりに生かしていく発想と努力が求められます。日本商工会議所では、各地商工会議所をはじめ民間が主導するまちづくりの成功事例の調査・分析などを通じ、まちづくりの具体的な手法を検討してまいります。

東日本大震災からの復興

わが国の抱える第三の課題は、震災からの復興であります。

発生から8年が経過した東日本大震災に関しては、事業再開や生活再建の面で着実な前進が見られる一方、インフラ整備などが予定通り進んでいない地域が存在し、また、人手不足や資金繰りなどの新たな課題も発生しています。福島の再生には、長期にわたる粘り強い対応が不可欠なことは申し上げるまでもありません。

このため、私は先月、渡辺復興大臣を訪問し、残り2年余りとなった現在の復興・創生期間終了後も、省庁横断的で一元的な対応を可能とする支援体制の継続、安全・安心に関わる風評の完全払拭(ふっしょく)に向けた政策努力を強く求め、政府は、復興庁の後継組織を設置することを基本方針に明記しました。

日本商工会議所では、今後とも、全国515商工会議所のネットワークを活用し、復興・創生期間後も見据えた支援と、自立した地域経済の再生に向けた活動を全力で展開してまいります。

当面の課題への対応

そのほかにも、中小企業や地域経済を巡っては、多様な課題が存在しています。

従前から指摘されている小規模事業者などの資金繰りや販路開拓、海外展開、創業・経営革新、知的財産の活用などのほか、消費税率引き上げに伴う価格転嫁や軽減税率、キャッシュレス化への対応、法人および個人向けに拡充、整備された事業承継税制の活用などを通じた円滑な承継の推進、さらには災害に備えたBCP(事業継続計画)対策などにも取り組んでいかなければなりません。

特にBCPに関しては、近年、頻発する大規模な自然災害が、中小企業の事業活動に大きな影響を及ぼしています。日本商工会議所では、モデルBCPの提供や保険制度の活用促進などを通じて、中小企業ならびに商工会議所における防災力の向上を支援してまいります。

また、多様化する課題に対応するためには、商工会議所自身が一層の機能強化を図ることが不可欠であります。日本商工会議所では、各地商工会議所の人材育成の一助として、昨年からオンラインを活用した研修を導入したところ、小規模都市の商工会議所をはじめ、評価する声を多数いただいております。今後、さらにコンテンツの充実を図り、各地商工会議所の人材育成を強力に後押ししてまいります。

以上、所信の一端を申し述べました。

わが国は、まもなく「平成」が終了し、新しい時代の幕開けを迎えることになります。私は、天皇陛下御即位三十年、そして皇太子殿下の御即位に当たり、日本商工会議所会頭として、奉祝委員会の会長を拝命し、大変重く、しかし、大変光栄な役割を仰せつかりました。商工会議所は、長い歴史と伝統を有し、これまでも企業、地域社会、そして国を支えるさまざまな活動に取り組んできたからこそ、このような極めて重要な役割を担わせていただくものと存じます。

来るべき新時代においても、中小企業と地域社会の発展を通じて、日本経済の持続的な成長を実現していくことが、商工会議所に課された使命であります。

間もなく迎える2019年度においても、私は、先頭に立って、皆さまとともに頑張ってまいります。引き続きのご支援、ご協力をお願いして、私のあいさつとします。(3月20日)

世耕弘成経済産業大臣メッセージ要旨

商工会議所と手を携えて

平成の30年間で、日本社会は大きな変化を遂げました。2019年、20年は、変革の集大成の年といえましょう。

まずは、改元です。いよいよ5月には、新たな時代の幕が上がります。10月には、消費税率の引き上げが予定されています。一番の課題は景気の落ち込みを抑えて、増税を乗り切ることです。思い切ったポイント還元により、中小企業・小規模事業者のキャッシュレス対応を支援いたします。

最近はスマホをかざして使えるキャッシュレスサービスなども登場しています。政府としても、皆さまの負担ゼロでキャッシュレス端末を導入してもらえるよう支援いたします。

消費増税で確保した安定的な財源をもとに、全世代型社会保障を構築することが政府の重要課題です。厚生労働省とも協力し、全世代型社会保障の実現に取り組みます。

まもなく新年度です。働き方改革、外国人材の受け入れ拡大というに二つの大きな改革がスタートいたします。政府では外国人材との一層の共生という新たな挑戦に、一丸となって受け入れ環境の整備に取り組みます。

来年は復興五輪です。聖火リレーは福島からスタートし、東日本大震災の災禍から力強く立ち上がる東北の姿を、世界中に発信してくれるでしょう。福島の復興なくして、東北の復興なし。東北の復興なくして、日本の再生はなし。廃炉・汚染水対策、被災者の皆さまの事業・なりわいの再建、福島イノベーション・コースト構想推進による新たな産業基盤など、福島復興の流れを本格化させてまいります。

3000万人超の雇用を支える中小企業・小規模事業者は、経済の屋台骨であり、より強固にするために三つの課題に取り組みます。

一つ目は、後継者不足です。今年は承継時の税負担を実質ゼロにする個人版事業承継税制を創設いたします。

二つ目は、生産性の向上です。ものづくり・商業・サービス補助金による新たな商品開発のための設備投資の支援や、固定資産税をゼロにできる制度を通じた負担軽減、販路開拓の支援など、裾野の広い生産性向上を行ってまいります。

三つ目は、下請け取引の改善です。これは私が、最も心血を注いで取り組んでいる課題です。今年4月から大企業で全面的に働き方改革が始まりますが、そのしわ寄せが中小企業・小規模事業者にいってはなりません。来年度は下請け取引や転嫁対策を監視するGメンを600人態勢に強化し、商慣行の改善に向けて全力で取り組んでまいります。

日本の宿命ともいえる災害への備えにも万全を期します。防災・減災対策促進のため、必要な措置を盛り込んだ法案の提出や税制措置を含む支援を行います。

そして地域経済活性化。約3700社の地域未来牽引(けんいん)企業に対する集中支援を行います。

2025年には大阪・関西で再び、国際博覧会が開催されます。1970年の大阪万博で、私たちは胸を躍らせました。2025年の大阪・関西万博は「ソサエティ5・0」のショーケースです。AI・IoTが実装された未来社会で、どのような夢や驚きを与えられるか。再び子どもたちが胸を躍らせるような万博をオールジャパンで準備いたします。 全国ネットワークの商工会議所と経済産業省が手と手を携え、日本経済の発展に全力で取り組んでいければと思っております。(3月20日)