迎えた2019年は、氷の上に梨の花が咲く。いや、これから北京五輪(2022年)に向かって可憐(かれん)に、そしてゴージャスに咲き続けていくことだろう。女子フィギュアスケート・紀平梨花選手である。
身長154㎝、兵庫県西宮市出身の16歳。平昌五輪は、出場規定の年齢まで21日足りなくて出場することはできなかった。満を持して登場した2018年のシニア大会では、連戦敵なし。オンドレイ・ネペラ杯、西日本選手権を連勝すると、初めてのグランプリ・シリーズ(GP)となったNHK杯とフランス杯も連勝。世界で6人しか出場できないGPファイナル(12月、バンクーバー)でも圧巻の演技を見せて初出場初優勝を飾った。日本女子のGPファイナル優勝は、村主章枝、浅田真央に次いで3人目。初出場での優勝は、05年の浅田真央以来2度目の偉業である。加えて言えば、紀平選手の優勝はロシア勢の5連覇を阻止する日本待望の新星誕生となった。
紀平選手の何がすごいのか? 彼女はどんなジャンプでもクリーン(完璧)にこなすオールマイティーだが、その能力の高さを分かりやすく言ってしまえば、浅田真央さんが伝家の宝刀としてここ一番で繰り出していた「トリプル・アクセル」を何の苦もなく2回跳んでしまうことだろう。そればかりかトリプル・アクセルから連続して違うジャンプを跳ぶコンビネーション・ジャンプも取り入れて、異次元の演技を可能にしている。これには平昌五輪金メダリストのザギトワをはじめロシア勢も歯が立たなかった。
しかし、彼女の魅力は大技のトリプル・アクセルだけではない。何種類もの3回転ジャンプを美しく跳ぶばかりか、こうしたジャンプを組み合わせる3連続のコンビネーション・ジャンプも得意にしている。スピンやステップ、表現力という点でも抜群の内容を誇り、世界に登場した瞬間から「氷上の女王」としての輝きを見せているのだ。
彼女の強さは、高い技術力はもちろん、明るくて前向きなメンタルにも支えられている。GPの優勝もプレッシャーどころか自信になると語った。そして目指す目標を見失うことはない。「北京五輪で優勝という夢がある。それまで安定した成績が残せるように、と思います」
世界を席巻するヒロインは突然やってくる。彼女の時代が始まった。
写真提供:産経新聞
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