わが社もできるIT化/身の丈ITで生き残れ! vol.12

内海和浩社長の経営手腕の評価は高く、18年広島県中小企業家同友会福山支部「 "輝け"経営者大賞」大賞受賞など受賞歴も多い

「ぶっちぎりの超短納期!」。広島県府中市の内海機械のパンフレットには、誇らしげにそう書いてある。同社の強みは、顧客が急に必要になった部品をわずか2、3日で納めるスピードだ。その圧倒的な超短納期実現の背景にはアナログとITの融合があった。

アナログを極めたからこそITの導入効果が得られる

内海機械は1949年、現社長の内海和浩さんの祖父が織機メーカーとして創業した。父の時代となり72年に木工機、内海さんの時代に金属加工に転換した。内海さんが社長を継いだ2007年当時は、どこにでもありそうな古いタイプの町工場だった。工場内は整理整頓ができておらず、不良品の発生が多く、納期も遅かった。

「金属加工の分野では後発の当社は現状のままでは生き残れないと考え、役員になったタイミングで事業計画書を初めて作り、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底による“見て感動する工場”の実現や納期遅れの改善などを盛り込みました」

口頭での指示で終わらせず、事業計画書によって従業員に3年後、5年後に実現したい会社の姿と覚悟を示したわけだ。

「事業計画書を理想論で終わらせないよう月例会議を開いて進捗(しんちょく)状況を確認し、方向性をすり合わせ、PDCAサイクルを回して改善していき、賞与面談では従業員一人一人の思いを聞きました」

内海さんのリーダーシップによって会社全体が動き出した。5Sはもちろん、定品(工具や部品など)を定位置に定量配置する「3定」が徹底された。工具や部品の入った引き出し棚が撤去され、工具はすぐに使えるように壁の定位置に掛ける形に変わった。モノは1週間以内に使うものだけが従業員の周辺に置かれるようになり、当面、使う予定のないものは倉庫に移った。そして、半年以上使わないものは廃棄処分。廃棄量は9トンに達したという。毎朝行う段取り確認も入念に行い、従業員の動きのロスの削減にも取り組んだ。「すると3年後、5年後どころか半年くらいで形になり始めた。そのスピードに私の方が驚きました」

会社の付加価値は、「強み」から生まれると考えた内海さんが次に取り組んだのは、「強み」をつくることである。『なんでもできること』『早くできること』『従業員の質が高いこと』を強化する作業だ。「そこで、今いる従業員の多能工教育はもちろん、理工系大学の新卒社員を積極的に雇って多能工に育て、生産のスピードをさらに速くして、ライバルの少ない単品生産というニッチな分野でトップになろうという戦略を立てました」。つまりは「ぶっちぎりの超短納期!」である。

同社の力(資金や知見)だけでは不足する部分は府中商工会議所を「フル活用して補助金を申請したり、広いネットワークを使って必要な知識を持つ人を紹介してもらったりしました」。補助金の例では、2015年に「コレットチャック(加工時にワークや切削工具を固定するための消耗工具)の製造コスト削減及びQC(品質管理)体制の確立による医療機器分野へ進出」という事業でものづくり補助金などの交付を受け、新事業進出の足掛かりをつくった。

多能工の育成とともに、機械の稼働率向上にも力を入れた。各機械にアナログのカウンターを付けて、主軸が動く度にカウントする独自の集計システムを導入。一日の終わりに機械ごとの稼働率を記録し毎月、稼働率を集計して、稼働率の低い機械のてこ入れを行った。一つ一つは小さな改善でも、積み重ねると生産性が向上する。例えば、旋盤の稼働率は17年3月の27%から18年7月には43%に、フライスは43%から60%に改善した。工場全体では生産性が約3割高まり、以前なら断っていた仕事を受注する余裕が生まれた。

機械の稼働状況をIoTで確認、HP通じ全国から集客

アナログの分野ではほぼやり尽くした感があったとき、「国が中小企業のIoT活用推進の旗振りをしていることが分かりました。商工会議所に相談したところ、中小企業庁の『ミラサポ』を紹介され、話を聞くうちにIoTをいち早く導入すれば先行者利益が得られるのではないかと考えるようになりました」。従来からあった集計システムをIoTで結び、リアルタイムで状況が分かるようになれば、その場でてこ入れができることに気が付いたわけだ。

そこで、IoTを手掛ける複数の機械商社に声を掛け、ミラサポのアドバイスを受けつつ最も適切なシステムを導入した。導入期間は、わずか3カ月程度で済み、18年9月、10台の機械をインターネットで結んだスマート工場が誕生した。

「機械の稼働状況が外出先でもスマートフォンを通じてリアルに分かるので、機械が停止していれば工場内のカメラで状況を確認し、現場の担当者に理由を聞くことができる」

ITの活用は、機械だけではない。多能工の動きを画像分析して無駄を改善。また、超短納期をうたうホームページのデザインや使い勝手、内容を充実させた結果、全国から注文が来るようになったという。

アナログを極めIT化を推進した結果、同社の顧客は備後(びんご)周辺から全国に広がったのである。

会社データ

社名:株式会社内海機械

所在地:広島県府中市鵜飼町743-1

電話:0847-45-6300

代表者:内海和浩 代表取締役

従業員:14人

HP:https://www.utsumi-kikai.co.jp/

※月刊石垣2020年4月号に掲載された記事です。

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