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コラム石垣 2019年10月21日号 中村恒夫

「人工知能(AI)に詳しい人材がいないと企業として生き残れないのでは」と旧知の中堅企業役員は真剣な表情で懸念を口にした。政府がAIなど最先端技術に通じた人材を地方自治体に派遣するという報道を聞いて「わが社は遅れている」と思い込んだらしい。具体的な事業化を検討しているわけではなく、何かしなくては、との考えから、あちらこちらのセミナーを受講しているという。こうした経営者は決して珍しくないと思う。

▼確かにAIには、既存のビッグデータを活用し、仕事の合理化を進めるだけでなく、新たなビジネスを生み出す可能性がある。一方で文章の読解力に乏しいことが国立情報学研究所の新井紀子教授に指摘されているのをはじめ、類推や独創的な思考が苦手であると開発に携わる研究者からも言われている。「おもてなし」という言葉に代表される日本の細やかな接客対応を代替することも当分は無理だろう。

▼新聞業界でも、パターン化した発表文からの記事作成や、新聞記事を文字ニュース用に要約する作業で、AIが活用されるようになってきた。しかし、独自ニュースの発掘は個々の記者以外では決してできない。重要案件の当事者に会って、重い口を開かせるのは、信頼を獲得した記者であるからこそ可能になる。

▼多くの職場でも同様の仕事があるはずだ。経営者は自社の業務の中で、人間だから実現できることが何かをきちんと仕分けすべきだ。それができているなら、AIを活用した事業の可能性がどこにあるか、検討対象が見えてくるようになろう。一連の作業に取り組めば、収益性や成長性など事業の棚卸しが、経営者にとって欠かせないと再確認する好機になるかもしれない。

(時事通信社常務取締役・中村恒夫)

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