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コラム石垣 2019年10月1日号 宇津井輝史

国家間の関係は、地理や地勢、海洋や資源に依存する。戦前は日本でも地政学の研究が盛んだった。だが戦後は戦争指導理論とされて遠ざけられた。戦争に敗れ、破滅に導いたのは、政治と軍部が国の方針と実行を誤ったからであり、地政学のせいではない。領土を取り戻すには戦争をするしかないとつぶやく政治家が出てきたのは驚きだが、あの戦争に至る歴史を検証し、過ちを繰り返さない努力は不可欠である。戦争憎しで戦前をすべて否定してきた戦後社会のありようもまた、責任を曖昧にし、いつか来た道を繰り返すのではと愚考する8月だった。

▼地政学の始祖は世紀英国の地理学者マッキンダーである。国際情勢の基本線は、ユーラシア大陸に拠点を置く内陸国と、それを海側から制御しようとする海洋国のせめぎ合いにあり、世界の安定のためにはユーラシアを一手に支配する強国の存在を許すべきでないとした。内陸国はロシアと中国、海洋国は米英と日本に代表される。日露戦争時の日英同盟はロシア封じ込め戦略だった。米ソ冷戦もイデオロギーより地政学で割り切れる。大胆に割り切るのは地政学の魅力だが、危険性でもある。いま、地政学に最も忠実なのはプーチンのロシアと習近平の中国である。

▼米国がグリーンランドの購入を打診したのは、北極圏における中国の力を排除するためだ。中国は地政学で「戦後レジーム」への挑戦を続ける。中東を地政学で一皮むけば、ロシアとトルコとイランという旧帝国の断層線であることが露わになる。韓国という国はあるべきではない、と考える指導者が韓国に現れたらどうなるか。半島全体が棚ぼた式に中国というユーラシア大国の支配下に置かれる道を歩むだろう。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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