コラム石垣 2018年8月1日号 神田玲子

デジタル化がもたらす「創造的破壊」の波を受けて、既存の企業が脅威にさらされている。しかし、破壊される対象はなにも企業に限らない。経済、政治、社会など私たちの生活を規定している制度そのものも、対象となる。

▼18世紀のイギリスで始まった産業革命時も、既存の制度が廃止され、それに代わる新しい制度が生まれた。絶対王政の下で特権階級に与えられていた独占的権利は、力を増した産業資本家にも開放された。労働者やその家族の生活を守るために社会保障制度が生まれた。自由と公正という普遍的な価値に基づく制度が、200年という長い年月をかけて置き換わっていったのが近代の歴史である。

▼デジタル化、特に人工知能が主導する産業革命は、今、始まったばかりである。機械学習を取り入れた商品・サービスの開発に企業がしのぎを削っている。人工知能の使用は、われわれに未知の問題を提起する。事故を起こしたときの責任問題、企業によるビッグデータの独占、サイバー攻撃、軍事利用としての在り方などだ。これらは、既存の制度では、とても対応しきれない。

▼到来するデジタル時代にふさわしい制度とはどのようなものだろうか。デジタル社会の本質は、人と人とが対等な関係でつながることによる社会的な価値の創造にある。そこでは、インターネットを味方に、多くの人と信頼関係を築いた「個人」が社会の主役に位置付けられる。仲間とつながる個人の力を最大限に生かす制度がデジタル時代にふさわしい。自由、公正に続く、第三の価値を何とするのか、そこにヒントが隠されているはずだ。一人一人が答えを見つけなければ、創造的破壊の波を乗り越えることはできまい。

(神田玲子・NIRA総合研究開発機構理事)

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