このコーナーでは、「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」の概要や親事業者・下請事業者の定義、取引の内容、親事業者の義務・禁止事項などを、Q&A方式で解説しています。今回は「不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止」についてご紹介します。
Q.部品などの製造・加工を下請事業者に依頼しました。しかし、製品の売れ行きが悪いことから、当該部品について調査したところ、不具合のあることが判明。その後、製品の在庫が急増してしまいました。当該部品の一部の発注を取り消し、その取り消した発注分に掛かった原材料などの費用を下請事業者にそのまま負担させたいのですが、この場合は下請法上の問題となりますか?
A.場合によってはYES!
下請事業者が納品した部品の傷などが、親事業者の仕様や設計上の問題によるものではなく、「下請事業者の責めに帰すべき理由」により生じた場合であれば、下請事業者にやり直しをさせることができます。また、傷の補修が困難で、別の部品をつくり直す必要があれば、原材料の費用をすべて下請事業者に負担させることになっても問題はありません。 しかし、親事業者が取引先から発注を取り消されたり、売れ行きが悪くて在庫が急増したなどの理由であれば、発注の取り消しは「不当な給付内容の変更」として違法となります。このケースでは部品に不具合が生じた原因が分かりませんが、納入前でも、そもそも下請事業者の設計図や製作工程が親事業者の仕様通りではなく、不具合が生じていることが合理的に判断できるような場合には、下請事業者に責めに帰すべき理由があるとして、親事業者が原材料などの費用を負担せずに、給付内容を変更することができます。
Q.下請事業者から納入された物品が受け入れ検査で不合格となった場合、下請事業者を自社工場に呼んでやり直しをさせることは可能ですか。また、やり直しをさせた場合に、親事業者の設備を使用した費用を下請事業者に請求することはできますか?
A.十分な協議が必要です
下請法は、親事業者が下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、費用を負担せずに「やり直し」をさせることを禁止しています。
このケースでは、下請事業者を親事業者の工場に呼んで手直し作業をさせることは可能と考えられます。しかし、親事業者の設備を利用することで、下請事業者が自らの工場で手直しをするのと比較して大幅に費用が掛かってしまうような場合、強制的に親事業者の設備を使用させることは、下請法の「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に該当する可能性があります。
このため、親事業者と下請事業者の工場、どちらで手直しを行うのか十分に協議し、親事業者の工場で行う場合は、設備使用料などについて双方で納得する妥当な額を決めることが必要です。なお、親事業者が自ら手直しをした場合には、親事業者がそれに要した費用を下請事業者に請求しても問題ありません。
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