このコーナーでは、「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」の概要や親事業者・下請事業者の定義、取引の内容、親事業者の義務・禁止事項などを、Q&A方式で解説しています。今回は「購入・利用強制の禁止」についてご紹介します。
Q.顧客から受託した運送を下請事業者に委託しています。発注担当者から下請事業者に当社と取引のある保険会社を紹介することは下請法違反になりますか?当社としては、保険料が下請事業者にとって有利であれば当該保険を利用してもらいたいと考えております。また、事故が発生した場合でも、保険会社が同一だと対応しやすいと考えています。
A.YES.強制的に購入・利用させると下請法違反となります 正当な理由がないのに親事業者の指定する「物」「役務」を強制的に購入・利用させて対価を支払わせると、「購入・利用強制」として下請法違反となります。「強制して」ではなく「任意に」購入などを依頼する場合は、購入・利用強制には該当しません。しかし、親事業者は任意で購入などを依頼したと思っても、下請事業者にとってはその依頼を拒否できない場合もあり得ますので、「強制」か否かは、事実上、下請事業者に購入などを余儀なくさせていると認められるかどうかで判断されます。購入・利用強制に該当する例として、「外注担当者など下請取引に影響を及ぼす者から要請すること」「目標額・量を定めて要請すること」などは購入・利用強制の禁止に該当する恐れがあるとされています。
質問の件は、親事業者としては「有利であれば利用してもらいたい」とのことですが、下請事業者は、親事業者の発注担当者から保険会社の紹介を受けた場合、取引の継続を考えて利用せざるを得ない状況となり得るので、「購入・利用強制」として下請法上問題とされるおそれがあります。
Q.顧客から請け負ったビルのメンテナンスのうち清掃業務を下請事業者に委託しています。また、当社では掃除用具のレンタルサービス事業も行っているので、当該下請事業者に対し、発注担当者から当社が提供する掃除用具のレンタルサービスの利用を要請し、利用してもらっています。問題となりますか?
A.YES.購入・利用強制に該当する恐れがあります 次のような方法で、下請事業者に購入・利用を要請することは、購入・利用強制に該当するおそれがあります。「発注部門の担当者等から下請事業者に購入・利用を要請すること」「目標額又は目標量を定めて購入・利用を要請すること」「購入・利用しなければ取引に影響することを示唆して購入・利用を要請すること」などです。
質問の件は、下請取引に影響を及ぼす発注担当者を通じて「掃除用具のレンタルサービス」を利用させたものであり、下請事業者は取引の継続を考えて利用せざるを得ない状況となり得るので、下請法上「購入・利用強制」として問題とされるおそれがあります。
Q.プライベートブランド(PB)商品を下請事業者に製造委託しています。当該商品に使用する包装資材、ラベルなどを指定して業者から購入させることは、下請法上の強制購入になりますか?
A.NO.強制購入には当たりません 親事業者が発注した商品の質を確保するために指定の包装資材などを親事業者の指定する事業者から購入させることは、購入・利用強制には該当しません。しかし、当該包装資材が親事業者の指定する事業者でなくても一般的に購入できるのであれば、購入・利用強制に該当するおそれがあります。
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