このコーナーでは、「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」の概要や親事業者・下請事業者の定義、取引の内容、親事業者の義務・禁止事項などを、Q&A方式で解説しています。今回は「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」についてご紹介します。
Q.プライベートブランド(PB)商品の製造を委託している下請事業者に対し、自社が開催するイベントの協賛金および物品の提供を要請していますが、問題となりますか。
A.場合によってはYES.
下請事業者が、親事業者に「経済上の利益」を提供することが製造委託などを受けた物品の売り上げ増加につながるなど、提供しない場合に比べて直接の利益になるものとして、自由な意思により提供する場合には「下請事業者の利益を不当に害する」ものではありません。しかし、下請事業者が「経済上の利益」を提供することが、下請事業者にとって直接の利益となることを親事業者が明確にしないで提供させれば、不当な経済上の利益の提供要請に該当する恐れがあります。 本質問については、親事業者が開催するイベントにより親事業者は商品の受注を得て、その結果、下請事業者が納入する商品も増えるとの考え方もあるかもしれませんが、これにより実際にどの程度受注が増えるのか合理的に予測することは困難であろうと思われます。直接の利益となることを合理的に説明できないような協賛金などを求めることは、不当な経済上の利益の提供要請に該当する恐れがあります。
Q.下請事業者に有償給原材料を約1年分支給し、加工を委託しています。有償支給材の決済は使用した支給材による納入分のみを下請代金から相殺しており、早期決済にはなっておりません。下請事業者からは支給材が大量で保管場所に困るとの話があるのですが、下請法上問題となりますか。
A.YES.
不当な経済上の利益提供要請に該当する恐れがあります 当該有償支給原材料は下請事業者が加工して納入した時点で、代金を支払う形となっていますので、まだ、使用されていない支給原材料は親事業者に所有権があります。発注に必要な数量を大幅に超える量の有償支給原材料を下請事業者に保管させることは、不当な経済上の利益提供要請に該当する恐れがあります。下請事業者の加工に必要な範囲で有償支給原材料を支給するなどの検討が必要です。
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