簿記をはじめ、活躍の幅を広げてくれる商工会議所の検定試験。資格取得・活用を応援する著名人からのメッセージを紹介する(掲載元・商工会議所検定ホームページ)。
経済活動を理解するための言語
人間は、社会の中で生きていますから、お互いが意思疎通するためには言語が必要です。簿記も経済活動を理解するための言語です。日本語や英語と違って、一つひとつの数字自体に意味があるわけではありませんが、例えば、後払いで販売した売掛金の金額や、借り入れた債務の金額は、その会社の財務の状態を表します。
簿記は英語よりも世界中で広く使われている共通の言語であり、これからのグローバルな社会で生きていくためにも欠かせないのですが、簿記になじみのない方が多いですね。中学や高校で全員が学ぶべきだと思います。
今は世の中がどんどん複雑になっています。ビジネスの舞台が国内から海外に広がり、商取引も複雑になっています。会計の制度が変わる場合もあります。このような環境に対応するために一番大切なことは、知識ではなく基礎を身に付けていることです。経済では「基礎」である簿記が重要になります。
人類にとって重要な発明
私も若いころに日商簿記3級の試験を受けて合格しました。そのときの強烈な印象は今でも忘れません。「簿記という体系を考えた人は、本当にすごい」と思いました。複式簿記は、人類にとって非常に重要な発明だと思います。
アメリカのビジネススクールでも簿記は必須科目です。というのも、最初に国民経済計算(SNA)(注)について学ぶのですが、この統計が簿記の合計から成り立っているからです。経済学者である私自身、日本の国内総生産(GDP)の話をするときなどに、簿記の知識が非常に役に立っています。
3級は勉強しておくべき
簿記を必要とするのは、経済を勉強する人や、会社で経理を担当する人ばかりではありません。日々の生計を立てていくためには、収入と支出による収支と、手持ちの現金や預金などの資産の増減、つまり簿記を考える必要がありますよね。年金のことや金融商品のことを考えたり、専門家からアドバイスを受けたりするためにも、簿記の知識が役に立ちます。
日商簿記検定はよくできた仕組みだと思います。何も知らなかった人が、きちんと勉強すれば合格という目標に到達し、3級の勉強をすることで経済の基礎が分かるのですから。試験を受けずに学ぶだけでも意味はありますが、資格を持っていれば「自分には基礎がある」という安心感が生まれ、「いざというとき」に強みを発揮します。「勉強はしたくない」と思っている方も、簿記3級だけは取ることを強くお勧めします。皆さん頑張ってください。注=一国の経済を世界共通の基準で記録する経済統計の枠組み。GDPもこの枠組みの一部
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