Q 昨今の感染症による、学校の期間的な閉鎖(休校措置)などの影響から当社でもテレワークを実施できないかと社員から提案がありました。遠距離通勤の社員や、育児などで時短勤務を希望している社員もいることから、今後、通勤の負担を軽減できるような働き方を検討したいと考えていたところです。どのように取り組めばよいでしょうか。
A 在宅勤務でテレワークを実施するには、利用目的に応じて適用する業務や対象者を決めること、労務管理上の扱いを労使間で取り決めること、情報通信環境を整えることなどの要件があります。ポイントを押さえた制度構築が必要です。
テレワークとは
社員にとっては、在宅での勤務が可能になれば、育児などと仕事の両立や通勤時間の有効活用が見込まれ、働きやすくなります。
一方、企業にとっても、育児や介護を理由とした離職を回避でき、業務の効率化、さらには事業継続対策の効果なども期待されます。
テレワークは働く場所によって、自宅利用の在宅勤務、モバイルワーク、施設利用のサテライトオフィス勤務などの三つに分けられます。労使双方が納得する形態や条件での実施が重要です。主に次の4点について検討し、労務管理の制度として整備します。
テレワーク導入の検討
1.対象者の選定
まず、どのような場合にテレワーク(在宅勤務)を認めるか、その対象事由を決め、その条件に沿って対象者を選定します。在宅勤務であっても労働基準法などは適用されるので、次の点に留意します。
①労働条件の明示
労働契約の締結に際し、就業場所を明示する必要があり、在宅勤務の場合、就業場所として社員の自宅を明示しなければなりません。
②労働時間の把握
出社時と同様に労働時間を適正に管理する必要があります。社員の労働日ごとの始業・終業時刻の記録を残し、確認することが必要です。業務中や在席中の確認方法も決めておきます。
③就業管理の取り扱い
就業管理について、出社する際と異なる制度(育児や介護のための短時間勤務制度など)を用いる場合は、その取り扱い内容を説明しておく必要があります。また、就業規則の変更手続きも必要です。
2.対象業務の整理
自社の業務の棚卸しを行い、テレワークや在宅で対応可能な業務を一覧化して、対象とする業務を決めます。テレワーク希望者には、その業務を割り当てます。
3.労務管理ルールの整備
就業規則には、テレワーク勤務に関して規定しておくことが必要です。育児や介護を条件とする場合の基準や、長距離、長時間通勤を判断する基準なども明確にし、就業規則に含める方法と、「テレワーク勤務規程」などを別に定める方法があります。なお、就業規則の作成・届出義務がない会社では、労使協定や労働条件通知書で対応します。就業のルールの取り決めは、社会保険労務士などの専門家に相談するとよいでしょう。
4.情報通信環境の整備
テレワークには、会社のシステムやネットワークに接続し、出社時と同様に業務がこなせる情報通信環境、リモートアクセスと呼ばれる仕組みが必要です。在宅勤務では、このためのパソコンなどの設備が自宅に整っていなければなりません。必要なものは会社からの支給(貸与)が望ましいですが、自宅(私物)のものでも構いません。また、会社と自宅のコミュニケーションツールとして、電子メールソフトやオンライン会議ツールなども検討します。
テレワークで使用するパソコンは、インターネットを経由して利用するので、不正アクセスやコンピュータウイルス対策が不可欠です。一般社団法人コンピュータソフトウェア協会が公表している「中小企業でのIT利活用によるテレワーク実現に向けたガイドライン」などを参考に、セキュリティー対策を講じるとよいでしょう。 (中小企業診断士 竹内敏則)
お問い合わせ
会社:Supported by 第一法規株式会社
住所:東京都港区南青山2-11-17
電話:03-3796-5421
最新号を紙面で読める!