毎年マスターカードが発表している「世界渡航先ランキング」2016年版では、バンコクがロンドン、パリ、ニューヨークなどを抑えて世界のトップに立った。2016年にバンコクを訪れたのは2147万人。そのうち85・6%はレジャーが目的で、政治混乱、テロ事件などもありながら、バンコクが世界から力強く観光客を呼び寄せていることが分かる。
アジアでは6位にシンガポール(1211万人)、7位にクアラルンプール(1202万人)、9位に東京(1170万人)、10位にソウル(1020万人)と5都市が入っている。かつては観光目的が少なかった東京も今や72・5%の渡航者はレジャー目的となっており、観光はますます大きな都市の成長の原動力になりつつある。
興味深いのは過去7年間の渡航者数の伸び率ランキングだ。トップは24・2%増の大阪。明らかに中国人はじめアジアからの観光客増が寄与している。2位は中国・四川省の成都なのは意外だが、8位の西安、10位の厦門とあわせ見れば、大気汚染が深刻で物価も高い、北京や上海が観光客には避けられていることがうかがえる。
注目すべきは急成長渡航先4位のコロンボだ。2009年に四半世紀にわたる内戦が終結し、「インド洋の真珠」と呼ばれた地位を徐々に回復。観光客が急増する一方、気候と衛生の良さから、南アジアのビジネスセンターとして外資企業の拠点になり始めているからだ。コンサルティング会社の米マーサーが発表する「世界生活環境調査─都市ランキング」2017年版でも、コロンボはイスタンブールやマニラ、深圳より上位にきている。
2010年あたりから日本でも渡航者、いわゆるインバウンドの経済効果が注目され始め、日本にいてもアジア需要が取り込めるという期待も高まっている。だが、やはり成長はアジアの現地で取り込むのが鉄則だ。特にまだリスクが高そうに見えて成長が加速している都市こそチャンス。その意味では、コロンボは典型的な都市と言えるだろう。
ほかに注目すべき都市は中国の珠海(広東省)、ミャンマーのヤンゴンだろう。珠海はマカオと一体化されつつあり、中間地帯の横琴地区に巨大な金融センターやオフィス街の建設が進む。ヤンゴンは言うまでもなく、ティラワ経済特別区(SEZ)など、低賃金の若年労働力を求める日本の製造業にとって新天地。新しい都市、再生し新しい力を持つ都市を見出し、飛び込む勇気が今、最も必要だ。
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