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アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 再生可能エネルギーがアジアで新たな商機に

太陽光発電の累積導入国の国別シェア(上)と太陽光発電導入予測(下)

日本では、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)により太陽光発電への投資のバブル化など問題も起きている。アジア全体を見渡せば、再生可能エネルギーが市場規模の大きい成長産業であることは間違いない。

官民でつくる欧州の太陽光発電機関、ソーラーパワー・ヨーロッパによると、昨年、アジア大洋州地域は太陽光発電設備の累積導入規模で欧州を抜いて世界最大となった。世界の太陽光発電パネルの48%はアジア大洋州にあり、欧州の34%、米州の15%を大きく引き離している。国別では中国が7790万kwでトップ、2位は日本で4290万kw、3位は米国で4241万kw。かつて世界の太陽光発電をリードしたドイツは4位に落ちた。中国、日本、インド、豪州の4カ国で世界の44・3%を占める計算だ。

風力発電では中国がやはり世界トップで設備容量で33・6%を占め、インドが5・8%で4位に食い込む。日本は18位と大きく出遅れているが、韓国、台湾などがこの数年、建設を加速させている。

アジア大洋州で再生可能エネルギーが活発化しているのは、電力需要が増加の一方、石炭など火力発電による大気汚染などの問題が深刻化。新たなクリーンエネルギーが必要になっているからだ。アジアは日射量の面で太陽光発電所の建設可能地が豊富で、風力も風況のよい地点が少なくない。特に最近、日本でも福岡県や福島県などで試験的に設置が始まった洋上風力発電は、インド南東部のタミル・ナド州や台湾が世界的な好適地といわれ、潜在力は大きい。

ビジネス的にみても再生可能エネルギーは、日本企業にとってチャンスが広がっている。太陽光発電パネルはトリナ、インリーなど中国勢が優勢だが、パナソニック、ソーラーフロンティアなど日本メーカーも存在感がある。風力発電設備はデンマークのヴェスタス、ドイツのエネルコンなどを抜いて、中国の新疆金風科技(ゴールドウィンド)が世界トップ、日本も三菱重工業など実績あるメーカーが少なくない。

一方で、再生可能エネルギーには系統連系や設置工事、周辺設備が幅広く、技術やノウハウが必要。日本で経験を持つ中小企業がアジア各地に展開できる可能性は実は大きい。エネルギービジネスには常に安全対応、保安規制というハードルがあり、日本企業が独自のポジションを築けるチャンスはある。カギは正しい現地情報の取得とリスクを取って出る決断、信頼できる現地パートナーだ。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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