アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 「支付宝」 ビジネスへの生かし方

タイ・バンコクのセブン-イレブン

「支付宝(アリペイ)」が日本市場に本格上陸し、静かに広がり始めている。支付宝とは「天猫(Tモール)」「淘宝網(タオバオ)」などを運営する世界最大のネットショッピング事業者である中国のアリババが展開するオンライン決済サービス。パソコン利用から始まったが、今はスマホで使うのが主流。中国ではもはやこれなくしては日々暮らせないといってもいい〝社会インフラ〟だ。当然、日本にやってくる中国人観光客には日本でも使いたいという要望が強い。昨年、東京、大阪の家電量販店から始まり、空港の国際線ターミナルの店舗で使えるようになり、さらに今年1月下旬からはローソン全店などコンビニにも導入された。2010年以降の銀聯カードのようにあっという間に日本全国に広がるだろう。

支付宝はネットショッピングの決済向けに開発されたが、リアル店舗では「Suica」や「WAON」のように使うことができ、少額送金もできる。春節(旧正月)にはお年玉にあたる「紅包」を支付宝で送るという習慣もこの2、3年で定着した。さらに高い利回りの資金運用サービス「余額宝」にもつながっているなど、極めて多機能な金融サービスだ。クレジットカードが発達していない一方、金融規制が緩い中国ならではといえるが、外国人でも利用可能という点に注目する必要がある。日本を含め、アジアの決済インフラになる可能性を持つからだ。

訪日中国人の「爆買い」は一時ほどの勢いはないものの、安定して大きな消費であり、その取り込みには支付宝は重要なツールとなる。日本企業の中国市場への浸透にも、支付宝の協賛イベントなどは効果があるだろう。だが、より注目すべきは、東南アジアやインドへの支付宝の展開の可能性だろう。個人向け与信が発達していない国では、アカウントにあらかじめお金を積む支付宝方式は原始的だが有効であり、店舗側が専用端末ではなく、QRコード読み取りで対応できるのも普及を加速させる要素となる。

支付宝にとって隠れた追い風は、中国メーカーのスマホのアジアでのシェア拡大だ。昨年、7840万台を販売、中国でシェアトップに立ったOppoや2位の華為技術(ファーウェイ)、3位のVivoなどはタイ、ベトナム、ミャンマーなど東南アジア各国でブランド力があり、小米(シャオミ)、華為技術はインド市場でシェア2、3位につけている。中国スマホとタッグを組んだ支付宝のアジアへの普及をどう自社ビジネスの成長に結びつけるか、日本企業にはしたたかさが必要だ。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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