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こうしてヒット商品は生まれた! 恵みの庭のかぼちゃプリン

市を代表する特産品の「えびすかぼちゃ」をふんだんに使い、滑らかな食感としっとり濃厚な味わいが持ち味。90㎖入り340円(税込)

北海道の恵庭商工会議所が、地域の特産品の「えびすかぼちゃ」を活用して開発した「恵みの庭のかぼちゃプリン」が、累計販売数10万個を超える人気商品となっている。近年のスイーツブームにより、多様な商品が各地に誕生する中、多くの舌を魅了した味とは――。まちの活性化を目指し、地域ブランドへと育て上げた試行錯誤の日々を追う。

商工会議所が新商品開発で地域おこし

恵庭市は、札幌市と新千歳空港のほぼ中間に位置する。札幌市のベッドタウンである一方、恵庭岳の裾野から広がる雄大な自然環境にも恵まれ、農業も盛んだ。中でも有名なのが、「えびすかぼちゃ」である。糖度が高くホクホクした食感が特徴の西洋かぼちゃで、もとは京都で開発された新品種だが、昭和39年に北海道ではどこよりも早く栽培に乗り出し、今や同市を代表する特産品となっている。

それを使ってつくったのが、「恵みの庭のかぼちゃプリン」だ。かぼちゃ本来の自然な甘さと食感を生かし、滑らかな中にも確かな食べ応えのあるのが特徴で、添加物も一切使っていない。食べると豊かな気分になる味がファンをとらえ、販売累計10万個を突破する人気商品となっている。

同商品の開発を主導したのは、恵庭商工会議所だ。平成21年に「地域資源∞全国展開プロジェクト」に採択されたのを受け、地域の特産品を活用した新商品の開発に乗り出したのが始まりだ。

「最初に手掛けたのは、えびすかぼちゃのフレークを練り込んだジェラートです。ほかにも、姉妹都市(ティマル市)を結ぶニュージーランド産マヌカハニーやブラックカラント(カシス)を使ったジェラートをつくって販売を開始しました。恵庭の新しい味覚としてティマル市長の推薦をもらい、新聞にも取り上げられたことで、たちまち人気に火が付きました」と同商品の開発を担当した同所の経営支援課長の梅根裕一さんは説明する。

商工会議所発のジェラートの成功により、次なる商品として考案されたのがプリンである。

自信満々のプリンが失敗した思わぬ理由

開発に当たっては、福井県サバエ・シティーホテル総料理長の藤井正和さん(当時)に協力を仰いだ。同ホテルでは、マンゴーやいちじくなどフルーツを使った商品を数多く開発・販売しており、中でも藤井シェフの監修した「マンゴーの王様プリン」はインターネット販売累計15万個を超えるヒット商品になっていた。開発はスムーズに進み、かぼちゃの含有量の多い、しっとり濃厚なプリンが完成する。商品名は市名から「恵みの庭のかぼちゃプリン」と名付け、縦長のおしゃれな容器に入れて、22年4月に「道と川の駅・花ロードえにわ」で販売を開始した。

「ところが、予想に反して売れ行きは芳しくありませんでした。贈り物にはいいけれど、自分用に買うにはプリン1個に480円は高いし、120㎖の容量も少し多かったのでしょう」

問題はそれだけではなかった。北海道物産展に出展しようとした際、製作が道外だったために、北海道商品として全国展開するのは難しいことが判明したのだ。そこで原料調達から加工、パッケージ製作までの全工程を市内で完結させるべく、商品のリニューアルに乗り出した。

「藤井シェフはレシピの使用を快く承諾してくれましたが、市内の洋菓子店やパン屋に製造を打診したら、全部断られてしまったんです。そんなとき市内の『リスボン』というカレー屋さんが新たに会議所の会員になり、駄目元でお願いしてみたら、なんと引き受けてくれたんです」

すぐさま藤井シェフのもとに行き、つくり方を教えてもらった。レシピは同じでも、つくり手が変わると微妙に固さや舌触りが変わってしまう。何度も何度も試作を繰り返し、ようやく味の再現にこぎつける。容量を90㎖、価格は340円(税込)に改定して、23年9月に販売を再開した。

売り上げが伸びて地域にも事業者にも変化

当初は年間販売目標を4800個としたが、ふたを開ければ9カ月で1万6000個と好調な売れ行きを見せる。北海道新聞の全道版に記事が載るとさらに火が付き、道の駅だけでなく、リスボン、キオスク、アンテナショップ、どさんこプラザ(札幌)などへと販路を広げていった。また、道の駅や大手スーパーなどでの試食イベント、物産展や展示会に出展するたびに記事に取り上げられたことで認知度が上がり、年間1万5000~2万5000個のペースで売れる人気商品となった。

「予想以上の売れ行きに、一度欠品を出した時期があるんです。かぼちゃの収穫期はお盆のころから1カ月くらいで、その間に1年分のかぼちゃペーストをつくるんですが、従来の量では足らなくなったため、リスボンさんは1カ月間店を休み、ペーストづくりに専念することになってしまいました。その反省から、以降はペーストづくりを食品会社に委託することにしました」

こうしてプリン製造はスムーズになり、1日約200個のペースで安定的に生産できるようになった。また、かぼちゃペーストを「うらごしえびすかぼちゃ」として商品化したほか、それを利用したスープや麺類、ロールケーキなども誕生。さらに、製餡(せいあん)会社とのつながりから「かりんとうかぼちゃ饅頭(まんじゅう)」を新たに開発し、好評を得ている。

「恵庭は通過型地域で、道外の人は空港から真っすぐ札幌に行ってしまうし、地域の人も買い物といえば札幌に足を運ぶ。しかし、かぼちゃプリンの成功で、地域の事業者の中に商品開発の機運が高まっています。今後も知恵を出し合い、地域資源を使った地域ブランドを充実させて、まちの活性化につなげたいですね」と梅根さんは力強く語った。

会社データ

販売社:恵庭商工会議所

所在地:北海道恵庭市京町80

電話:0123-34-1111

HP:http://www.eniwa-cci.or.jp

代表者:中泉 澄男 会頭

設立:平成2年

※月刊石垣2017年2月号に掲載された記事です。

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