awa酒という日本酒をご存知ですか? 厳格な基準の下で製造されているため、美しい透明な一筋泡が沸き立つスパークリング(発砲)タイプの日本酒です。シャンパンボトルに入った瓶からグラスに注いで和食に限らず、さまざまな料理と楽しめるお酒です。最近は海外の星付きレストランでもメニューに並び、通常の日本酒とは違った存在感を示し始めているようです。
このawa酒は、群馬県で「水芭蕉」という銘柄を製造する蔵元の代表が発起人となり、日本全国の蔵元に声を掛けて協会を設立しました。世界の乾杯シーンでシャンパンやスパークリングワインと肩を並べる存在となることを目指して、国内外で販売がスタートしています。
筆者も利き酒師として勉強会の開催で協力などをしていますが、awa酒は、日本酒業界として注目すべき努力がなされています。それは、商品としての認定基準を徹底していることです。
awa酒と呼ばれる製品は、発酵して発生した炭酸ガスの気圧の高さや製造方法、品質について厳格な基準が定められています。認定基準を満たしているかどうかの検査は、外部専門機関にて実施。全ての検査項目に合格した銘柄だけが、正式にawa酒として認定されます。認定基準を定め、運用することによる品質向上、マーケティング・ブランディング戦略の立案を通じて、市場拡大に貢献することを目指しています。
ちなみにawa酒と同じような発砲系の日本酒はすでに市場に幾つもありますが、味わいや管理方法もまちまちです。消費者からすれば分かりづらい商品でした。
こうした課題を解決することも認定基準をつくる目的の一つですが、海外の消費者を対象にマーケティングする際には重要度が大いに高まります。日本を代表する商品として、その魅力を販売に関わる商社や小売・飲食店に分かりやすく説明する言葉(想い)が必要だからです。それがあるから消費者は安心・信頼して選んでくれます。
まさにブランドマーケティングの基本的な手法といえますが、こうした取り組みが日本酒においては遅れているように感じています。「飲めば分かる」「分かる人だけ飲んでくれればいい」といったプロダクトアウトの発想だからなのかもしれませんが、その発想をやめて、分かりやすさを追求した蔵元の獺祭は、世界で人気を博す日本酒ブランドになりました。awa酒の取り組みも同じように世界で飲まれるブランドになることを願い、注目いただきたいと思います。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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