愛知県江南市は濃尾平野の最北端に位置し、北は木曽川を挟んで岐阜県と接しています。その歴史は古く、672年の壬申の乱で後の天武天皇とともに戦って勝利した村国男依(むらくにのおより)にゆかりのある地として知られています。
他にもエピソードがあります。江南市では毎年「江南藤まつり」を開催しています。会場の曼陀羅(まんだら)寺公園に隣接する曼陀羅寺は、建武の新政で知られる後醍醐天皇の勅願寺として14世紀初めに建てられました。その後、本殿は消失するものの、江戸時代に蜂須賀家政公によって再興されました。これは家政公が幼少期に、この寺で勉学に励まれたご縁によるものです。
当社は、昭和11年3月、大塚開進堂印舗として開業。しかし、13年に先代が徴兵により中国戦線へ赴くことになり、その間は母が印判業を営みました。終戦の翌日からは鼻紙、ローソク、インクなどの販売を開始。以降は文房具販売に軸を移していくことになります。
私は昭和44年、東京の大学を卒業し、オリエンタル中村百貨店(現名古屋三越)に入社。翌45年、開進堂に入り、コピー、ファックスなどの事務機を中心にオフィス家具などにも販売品目を広げて店頭と合わせ外商にも販路を広げていきました。
その後は、岐阜県に2店と岡崎市に出店しましたが、通販やインターネットの普及により、従来の店舗を核とした販売形態が通用しなくなり、やむなく撤退。現在では本店のみの営業となっています。
私には心に刻んでいる二つの言葉があります。一つは当社先代の、もう一つは尊敬する前会頭のKTXの野田泰義さんの言葉です。まず、先代の言葉から紹介します。先代は印を刻む職人として愛知県で第一号の一級印鑑彫刻技能士を取得した人物です。
「われわれ商人はメーカー、問屋さんから商品を分けていただいて初めて商売が成り立つ。得意先を大切にするのは当たり前だが、同様に仕入先も大切に」
次に前会頭の野田泰義さんの言葉です。彼は岐阜県から江南へ来て、裸一貫から起業。金型のポーラス電鋳を発明した立志伝中の人物。彼はこう話していました。
「人間は自分一人で生きているのではない。人から生かされて生きているのだ。社会から必要とされるから生きるのだ」
どちらも信頼関係を大切にせよ、というものです。今後も、この二つの言葉を教訓に前を向いて進みたいと思います。
最新号を紙面で読める!