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コラム石垣 2017年5月1日号 宇津井輝史

地政学がブームである。戦時中に戦争を煽った罪で戦後はずっと忌避され、一般の大学でも地政学は封印された。だからここ数年の地政学関係書籍の相次ぐ出版は隔世の感がある。だが内容は玉石混交である。最適の入門書だった曽村保信『地政学入門』(中公新書)は残念ながら絶版。いまならロバート・カプラン『地政学の逆襲』(朝日新聞出版)がお薦めだ。

▼地政学とは国際情勢を分析する手法の一つであり、一国の外交戦略を立てる際の補助線である。政治や経済、軍事的均衡は刻々と変わるが、地理的条件は変化しない。地球上の陸地と海の配置が動かない点に着目して外交戦略を考えるのが地政学の要諦だ。大胆な仮説を許すがゆえに為政者を虜(とりこ)にする一方、危うさもそこにある。

▼地政学はドイツで発達した。ドイツ製の地図は正確かつ美しい。ドイツ人は三次元で地図を読む能力と技術を磨き、内陸国としての発展のシナリオを地理の視点で読み取ってきた。そういう国に対抗するには、海洋国の米英もドイツの地政学的戦略を知るべきとの立場から書かれたのが、地政学の祖とされる英国人H・J・マッキンダーの『デモクラシーの理想と現実』(原書房・『マッキンダーの地政学』として最近復刻)である。

▼中国はずっと内陸国だった。近年、米中が対立するのは中国が海洋国を目指したためだ。海洋国の敵は同じ海洋国であることを歴史が示し、地政学が教える。

▼ユーラシア大陸の沖合に浮かび、朝鮮半島と至近距離にある日本の地理的条件は、たとえ鬱陶しくとも未来永劫変わらない。日本は戦前の大陸政策で誤った地政学を適用した。揺れ動くアジアに、日本はいまどんな地政学の補助線を引けるだろうか。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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