コラム石垣 2016年3月11日号 神田玲子

高度経済成長、中間大衆社会という言葉に象徴される「昭和」にノスタルジーを感じる日本人は多い。そんな昭和は、商店街の経営主をはじめとした自営業者によって支えられていたと気鋭の社会学者である新雅史氏は主張する。企業に雇われる「雇用の安定」とともに、「自営業の安定」が確保されていたことで、社会の安定が保たれていたという。

▼昭和30年代は、「働く=自営業」の時代ともいえるものであった。当時の統計を見ても、自営業者および家族従事者が就業者(除農業)に占める割合は約4割に上っていた。その後、自営業者の割合は一貫して減り続け、現在では1割以下の水準にまで低下した。今では、「働く=雇用される」状況が定着してしまった。働き手は、自分の事業が倒産する心配から解放されたが、他方で、解雇されるリスクを抱えるようになった。

▼両者のどちらがよいか比較は難しいが、働き方の選択肢は多い方が良い。少額の資金で、自由に起業し、それなりの資産を蓄積することができる自営業モデルがあれば、いざというときに、リスクが軽減されることにもなる。

▼現実に、そんな働き方をしている人がいる。パソコン1台でクラウドのオープンソースを活用して、個人で独立して仕事を受注する人が増えているという。経理関係はソフトを使って人手を省き、家族を養う程度の収入を得ると割り切れば、無理して仕事を受注する必要もない。IT技術が発達したおかげで、お金をかけずに独学で学習し、最先端の知識を身に付けることも可能だ。こうした変化を加速させるには、個人が企業と取引することがもっと恒常的になる必要があるが、情報化の時代は、新しい自営業者が生まれる時代といえよう。

(神田玲子・総合研究開発機構理事)

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