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コラム石垣 2015年4月1日号 宇津井輝史

河井酔茗に『ゆずりは』という詩がある。新しい葉ができると古い葉が落ちるその名の木になぞらえ、子どもたちに「おまえたちは何をほしがらないでも/すべてのものがおまえたちに譲られるのです」と世の摂理を説いた。前の世代が遺したものは後の世代への贈り物だ。

▼人間一人に与えられた時間は数十年だが、順次押し出されるように、社会を構成する人はほぼ百年ですっかり入れ替わる。毎年がその百年目である。順番に成長して社会を支えてゆく大循環。大人になる意味は社会の一員と認められることである。1876(明治9)年4月1日、「満廿年を以て丁年と相定め候」との太政官布告が出て以後、日本では20歳で大人の仲間入りをする。

▼長幼の序を重んじる中国社会は年齢の持つ意味にこだわった。5歳以下を童、7歳を悼(とう)、10歳を幼、20歳を弱、30歳を壮、以後十歳ごとに強、艾(がい)、耆(き)、耄(もう)、耊(てつ)と称した。かつては悼と耄、つまり7歳以下と70歳以上には刑が免除された。社会の一員と見なさなかったのである。

▼一人前の社会人になればどの国でも法的な権利義務が生じる。手にする権利の代表は選挙権だ。日本では成人と同時に得る権利だが、世界の趨勢は18歳。今国会で公職選挙法が改正されれば、若者の成熟が遅いといわれる昨今だが、ようやく日本も世界に並ぶ。来夏の参院選から240万人の新有権者が生まれる。

▼選挙権年齢が下がれば、遠からず18歳成人も視野に入る。社会の一員になれば、遺されたものを譲られる立場から、遺すべきものを作ってゆく立場に変わる。政治は社会をつくる道具だ。政治への関心は、手にした権利を行使するところから始まるだろう。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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